14日付Defense-Techが複数のメディア情報を総合し、イランとの核開発合意後の禁輸解除を受け、ロシアがイランに地対空ミサイルS-300(SA-10)の輸出を完了した報じています。
S-300はロシア版ペトリオットミサイルと呼ばれ、最新ピカピカとは言えないものの、航空機や巡航ミサイルに対処する射程200kmのロシア標準の地対空ミサイルで、弾道ミサイル防衛にも限定的ながら対応可能と言われています
ロシアとイランの間では、2007年に同ミサイル4セットの売却契約が一端成立しましたが、イランの核開発疑惑により(米国やイスラエルからの圧力も加わり)、ロシアも西側諸国と共に経済制裁をイランに課し、同ミサイル輸出も棚上げになりました
しかしイランと西側諸国間で核開発関連協議の進展を受け、米国やイスラエルの反対にもかかわらず、2015年にプーチン大統領が同ミサイルを含む禁輸措置の解除を決定し、実際のミサイルシステム提供が完了したとロシア政府が発表した様です
14日付Defense-Tech記事によれば
●13日、ロシア政府の武器輸出庁がイランへのS-300ミサイルの輸出完了を発表したと、ロシアのRIA news、ロイター等々が報じた。4セットの価格は約850億円と言われている
●ロシアはその国境を囲むようにS-300やその改良型であるS-400の配備を進めており、欧州飛び地カリーニングラード、クリミア半島やウクライナ周辺地域、シリアのラタキア等々に配備が進んでいる
●専門家は、ロシアが黒海、東地中海、中東において安全保障バランスの変更を企てており、大きなA2ADゾーンを構築しつつあると表現し、防空ミサイル配備により西側航空機の接近に大きな脅威を提示していると分析している
ウィキペディア情報によれば
●核開発疑惑があるイランへの配備は、イランの核関連施設の防御に使用される恐れがあることから、イスラエルと米国が神経を尖らせてきた。
●2007年にイランとロシアの間で結ばれたS-300の購入契約は、イスラエルや米国の抗議により契約履行が引き延ばされてきたが、2010年4月の軍事パレードにイラン国内で製造したS-300が初登場し、2010年5月のイスラエルメディアが、イランのイスラム革命防衛隊要員がS-300ミサイルシステムの操作訓練をロシア軍基地で受けていると報じた。
●2016年4月、イランの外務報道官はロシアからの購入契約が実行に移されたと記者会見で明言。同年8月、イラン国営テレビが同国中部フォルドゥの原子力施設付近に配備したとするS-300の映像を放映した。
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S-300やS-400は、ロシア極東のウラジオストック周辺にも配備され、中国の東シナ海沿岸地域にも導入されており、米国が警戒するA2AD網の中核を担う防空ミサイルです
また、米国の懸念表明や圧力を無視し、外貨獲得のためどんどん海外に売り込んでいる防空ミサイルです
イランの状況は把握していませんが、不安定さを増す中東の一画に間違いはなく、「イラン中部フォルドゥの原子力施設付近に配備」されたこと等から、取りあえずご紹介しておきます
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