米空軍:移動式ICBMは高コストで想定外

Midgetman.jpg15日、米空軍参謀総長として最後の軍事記者との懇談に臨んだWelsh大将(7月1日退役)は、米軍核抑止の3本柱の一つである地上配備ICBMを、移動式にして残存性を向上させる案を長年検討してきたが、高価なためあきらめたと発言しました
1980年代から実験や検討を重ねてきたようですが、この会見が正式断念発表だったのか、どのような会見の流れでこの発言が出たのか不明ですが、結論的には当面は「安価な」サイロ型のICBMを使い続ける事になるようです
16日付米空軍協会web記事によれば
●Welsh米空軍参謀総長は、移動式の地上戦略核抑止ミサイル(GBSD:Ground Based Strategic Deterrent)を検討したが、コストの問題から同オプションはあきらめたと語った
現有のICBM「Minuteman III」の後継議論の際、他の核保有国の核兵器がその精度や威力を増す中、残存性が重要だと感じていた私も、「移動式は検討しているか」と最初に担当責任者に問い正したのだが
Midgetman2.jpg移動式ICBMの検討は、1980年代にソ連の核ミサイルの精度が向上して第一撃の危険度が高まった時点から始まり、当時も車両搭載型、列車搭載型、またC-5大型輸送機から「Midgetmanミサイル」(80~90年代に米国が開発していた小型ICBM)を発射する案が検討され実験も行った
●その後も地上配備ICBMの代替検討は続き、実際長期間に亘って検討してきたのだが、大変高価なオプションである事が問題なのだと表現した
●そして次第に、地上戦略核抑止ミサイル(GBSD)の議論は、現在の地上インフラを最大限活用し、ミサイルだけを更新する方向に議論が向かった
●同参謀総長は、サイロ格納式のICBMは本当に低価格で維持でき、潜水艦搭載や爆撃機搭載の戦略核兵器と比較して迅速な反応が可能だとその特性を説明した
●そしてWelsh大将は核抑止3本柱を支持すると語り、新たなGBSD導入追求を正しいアプローチだと表現したが、信頼でき有効な核抑止体制を維持するためには、その資金確保のための国家的な議論が必要だと訴えた
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退役直前の「さよなら会見」に突っ込んでも仕方が無いのですが、戦略核抑止の重要性をそれだけ口にするなら、米空軍内の優先順位も上げたらどうかと思います
口先だけの「重要だ」発言は、士気低下が著しく、問題噴出中のICBM部隊の兵士を「しらけさせる」だけだと思いますが。
INF-USRU.jpgそれから、「国家的議論」が必要なのは、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約(射程500kmから5500kmの地上配備ミサイルの保有を禁じた1987年の米露条約)の今後についても同様だと思います。
中国が中距離弾道ミサイルをA2ADの柱に据えてどんどん近代化を進める中、ロシアもこっそりINF開発を行っていると情報が飛び交う中、米国も真剣に議論すべき時期にあると思います
INF全廃条約の破棄を願う
「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「INF全廃条約の破棄を願う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
核兵器運用部隊の立て直し
「別枠予算を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-27
「空軍No2に核兵器の専門家を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-17-1
「下院軍事委員長の本年重点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-14
「新年最初の記事は核部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-02
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「ICBMの後継検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-1

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