Yale大学で40年ぶりROTC卒業

Yale-ROTC2.jpg23日、カーター国防長官の母校であるYale大学で、ベトナム戦闘時に廃止され、2012年に復活したROTC制度で学び訓練した学生18名の士官任官式が行われました。
ROTC制度は、一般大学卒業後に軍幹部へ任官することを条件に、学生生活間に奨学金を支給する制度で、学生は大学在学中も一定の基礎訓練への参加が義務付けられるものです
ベトナム戦の反戦ムードの中でROTC制度を中止する大学が相次ぎ、その後は同性愛者に対する「聞かない、言わない原則:Don’t Ask, Don’t Tell」の存在を理由に、一流大学と目されるアイビーリーグの大学はROTC復活を拒んできました。
しかし2012年に「聞かない、言わない原則」が撤廃されたことを受け、一流大学でもROTC復活の流れが生まれつつ有り、ハーバード大学でも今年4月に同制度が復活したところです
1950年代にはハーバード大学に約700名のROTC学生が在籍しており、冷戦終了時には全米学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたとの統計も有り、軍事や安全保障を身近に考える環境にあったと考えられます。
2010年時点で、身近に軍務経験者がいる学生は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実と見られ、「軍と社会の乖離」や優秀な学生の確保が難しくなっています
母校での式典に参加したカーター長官も「軍と社会の分離」を憂慮し、ROTC復活が周りの学生の意識に働きかける効果を期待する旨の発言をしています。
他のアイビーリーグや一流大学の動向は承知していませんが、ハーバードでの復活の影響は大きい様ですし、大いに期待したいと思います
式典でカーター国防長官は
Yale-ROTC.jpg国家として非常に重要な制度が戻ってきた。新たに士官となった18名(海軍10名、空軍8名)は、長い間に固定化されつつあった分断に橋を架ける役割を支援してくれる
大学の同級生に潜水艦の原子力推進装置に携わる者が居いたり、同じ化学を専攻した同窓生に救難救助部隊員がいれば、又はプログラムの学生のクラスメイトがサイ
バー安全保障に関わっていることは、他の同級生や同窓生の考え方に新たなものをもたらすだろう
米国が直面している課題を大きく捕らえれば5つである。ロシアの攻勢的姿勢、アジア太平洋の歴史的変化、北朝鮮による核の恫喝、イランによる侵攻、テロやISIL撲滅である
●複雑で変化し続ける世界に対応してくれる決意をしてくれた君たちに、米国はプロ意識、革新を追求する意識、リーダーシップを期待する
2010年9月にゲーツ国防長官(当時)は本件について
gatesDuke.jpg●米軍は、徴兵制により冷戦時には世界最大規模となっていた。そしてこの規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした
●例えば、1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が設けられていた。そして彼らは軍務を追えた後社会の中心的役割を果たし、議会や民間企業や地域社会から軍を支えた
●このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である。
志願者の地域的偏りが・・・
●一般的に言えば、米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある
●ROTC制度を受け入れている大学の数からもこの傾向が見て取れる。人口が5百万人以下のアラバマ州で10個の大学が同制度を設けているのに対し、人口1200万人以上のロス周辺では4大学、シカゴ近郊の人口9百万エリアで僅か3大学である。
アイビーリーグと呼ばれる入学に高い学力を要求される大学は、このDuke大学を除き、ベトナム戦争時にROTC制度の廃止を決め、同性愛者への「問わない、言わない」方針を理由として現在もROTC制度を拒んでいる。
なおこのゲーツ講演(Duke大学ROTC学生対象)はリーダーとしてのあり方を語った印象深い講演です
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
例えば・・・
gatesDuke3.jpg●「高い適応性こそが、君たちのような若い士官候補生が軍に持ち込むことを期待される特性である。私はペンタゴンでこんな風に言って制服高級幹部をたしなめている陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望んでいるのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度が合い言葉なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?(Air Force just wants to keep flying?)」
●「私は君達に、常識的に上品で礼儀正しく(decency)、かつ部下に対しての敬意(respect)を持つ意識を持って組織をリードしてほしいと考えている。これらは単純で基本的なことであるが、しばしば忘れられており、私はペンタゴンで会う新しい将軍や上級スタッフにいつも言い聞かせている。」
●「上司や同僚の中で、君たち一人だけが真に正しいと思うことを主張し続けることは大変なことだ。しかしそれが、単に人気のある前例があるやりやすいではなく、真に正しいならばその方向を追求しなければならない
ロバート・ゲーツ語録100選
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
2010年9月のゲーツ長官Duke大学講演(2分割)
「リーダー像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「軍と社会の乖離」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10

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