米国防省機関見積:KC-46空中給油機は更に遅延

KC-46A2.jpg22日付「Bloomberg」web記事は、米国防省の国防契約管理庁DCMAが、米空軍の次期空中給油機KC-46Aの初期納入期限は、契約の2017年7月より遅れ、2018年3月頃に連れ込むだろうと見積もっていると報じています
KC-46Aは民航機(B-767)をベースに開発するリスクの少ない開発事業として、ボーイング社と米空軍間で「固定経費契約」が結ばれていますが、既に開発段階で1800億円もの経費超過(開発と最初の18機納入を約6000億円が元計画)が発生しており、ボーイング社が自己負担する事態となっています
ボーイング社は担当幹部を入れ替え、「大丈夫」との姿勢ですが、既に予備時間は使い果たしており、これまでの他機種の実績から期限内の納入は困難とDCMAは見ており、更なるペナルティーがボーイングに課せられる可能性が出てきました
米空軍は全体計画として、合計179機を約3.6兆円で導入する予定で、全体への影響は大きくないと見ることは出来ましょうが、現時点で米空軍と航空自衛隊しか導入する計画がないため、米空軍での「損失」を空自の価格に転嫁されるのでは・・・と心配でフォローしています
22日付「Bloomberg」web記事によれば
KC-46A1.jpg●DCMA(Defense Contract Management Agency)は電子メールで、「ボーイング社が契約期限までに18機のKC-46Aを納入可能とは考えにくく、7ヶ月遅れの2018年3月、またはそれより更に遅れる可能性もある」と伝えてきた
●一方でボーイング社報道官は、「我が社は飛行試験や航空機生産のペースを上げつつあり、米空軍との契約を厳守すべく着実なステップを踏んでいると信じている」とメールを返してきた
●しかしDCMAは、「過去の実績や現在存在するリスク」から遅れを見積もっていると述べ、現時点での遅れと過密になりつつある生産計画を、最新の米空軍とボーイング社の計画見直し結果や、今後の飛行試験等に伴う不確定要素を勘案して再評価し、遅れを予想しているとしている
●飛行試験の遅れ等から、既に米空軍は8ヶ月も最初の19機に関する契約を延期してる状態で、米空軍による2017年4月の作戦運用試験開始も危ぶまれている
今後ボーイング社内の飛行試験で不具合が見つかった場合、対処や設計変更等に時間が必要で、米空軍とボーイングは「影響を局限する対処を継続検討する」と言っているものの、DCMAは相当のリスクがあると見積もっている
米空軍報道官は「米空軍はDCMAを含む全ての情報を総合し、ボーイングとDCMAと協力してて開発の進行具合をレビューしている。ボーイングは必要な努力を行っており、現時点では契約時期に変更はない。ただし余裕が無くなっていることは認識している」とメールで回答してきた
納期遅れの場合のペナルティー
KC-46A.jpg●ボーイング社が2017年8月の契約期限を守れなかった場合、契約上のペナルティーを受けるほか、期限を守れた場合に用意されていた多くのインセンティブを得るチャンスを逃すとともに、今後の国防省との契約条件に影響する企業評価レベルの引き下げに繋がる
●ボーイング社は、遅れが顕著になってきた昨年、B-787旅客機の開発トラブルによる遅れ対処に手案を発揮したScott Fancher氏を開発統括副社長に昇任させてKC-46A事業に投入した
●そして民航機B-767の生産ラインも活用する対策に取り組んでいる
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引き続き米空軍とボーイングの動向を「なま暖かく」見守るとともに、航空自衛隊のKC-46A購入価格に注視していきたいと思います
韓国や豪州は、エアバス社製のA330ベースの空中給油機に決定しています。
KC-46A関連の記事
「初の給油試験に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26-1
「初飛行試験に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-18
「予定経費を大幅超過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-21
「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01

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