26日付Defense-News記事が、今後10年間で40兆円以上と言われる米軍核戦力の維持近代化施策に、ばらばら感のある米議会で超党派の理解が広まりつつあると報じています
22日の週に行われた2017年度予算を巡る米議会の公聴会でも、核兵器運用部隊の窮状に理解を示す反応や、「反対派」や「無視派」を説得しなければとの意見が議員から表明された模様です
核弾頭やミサイル、爆撃機や潜水艦の老朽化だけではなく、研究教育などの関連施設や人材管理に至るまで、全てが「忘れ去られてきた」「無視されてきた」核戦力部門ですが、金額が金額だけに、総論賛成・各論反対に今後なる可能性はあるのですが、問題への理解が進むことは良い事なのでしょう
具体的な核兵器近代化や維持施策については記事は触れていませんが、最近珍しい「超党派」との言葉ですのでご紹介します
26日付Defense-News記事によれば
●共和党と民主党の溝は2016年現在も深くあり、これはオバマ政権と国防省の間にも見られるのだが、その価格にもかかわらず、強力な核抑止力を支援する共通基盤が出来つつあるようだ
●カーター国防長官やダンフォード議長が議会で本件について語った際も「率直に親身な姿勢で」訴えに反応を示し、国家核安全保障局の幹部が1兆5千億円の予算案に関する証言した際も、要求額に理解を示し、更なる上積みも議員達は示唆している
●米戦略コマンドのCecil Haney司令官やBrian McKeon政策担当次官補が証言した際も、共和党のMike Rogers下院軍事委員長は「余りにも多くの政策立案関係者や宣伝屋達が、この問題に気づいていないか、意図的に無視している」「少なくとも基本的事項を知らない人達に周知することを諦めては行けない」と理解を示した
●民主党のJim Cooper議員も、「本問題に対する超党派のコンセンサスが形成されていることに感謝したい」と述べ、「核戦力3本柱」の重要性を訴えていきたいと語っている
●CSISのTom Karako上席研究員は、「現在あるコンセンサスのレベルを過小評価しては行けない。私は現コンセンサスの色調が、近未来から今後数十年と続く核態勢を支えるものに繋がるものだと考える」と現状を分析している
●このように合意形成が見られるものの、批判的な者はそのコスト問題を指摘し、近代化の延期や延長、一部計画の削減の必要性を指摘している
●また民主党関係者の中には、オバマ大統領が変化を示せば、民主党議員の反応も異なったものになるだろうと語るものもいる
●コスト見積もりには様々なものがある。McKeon政策担当次官補は、今後10年間で40兆円から55兆円と軍事委員会で語っており、議会予算室の40兆円より膨らんでいる
●またこれら数字が近代化のみの見積もりで、維持経費を適切に反映していないとの指摘もある。予算分析企業のVisualDoDは、本格的な近代化以前に、6兆円は必要だろうと分析している
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米国防省が打ち出している技術優位確保の取り組み「Third Offset Strategy」も、しばしばWork国防副長官が説明しているように、「John Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力(第2撃能力)と無敵の通常兵器保有がgreat powerには必要」との根本思想を基礎としています
つまり、核抑止の3本柱である爆撃機、戦略原潜、ICBMおよびそれぞれの核爆弾が健全であることが大前提です。
心ある議員の問題意識やサポートが継続すれば、「意識的に無視」「現実を知らない」軍人を含め、モメンタムが維持されるのでしょうが・・・
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