10日、James空軍長官が上院の予算関連委員会で、米空軍組織効率化のため議会から提案されていた「Integrated Wing構想」(I-Wing構想)について、空中給油機部隊を対象に2017年度中に立ち上げ、約3年間の試行で種々教訓等を収集すると明らかにしました
「I-Wing」構想の細部について米空軍web記事は説明していませんが、同様の機能を持つ部隊や、融合した方が機能発揮が円滑に進むと考えられる複数の部隊を「Integrate」することで、指揮統制をシンプルにし、重複する組織を効率化する構想のようです
「決まったパターンは無い」とか、「3年間の試行期間等は必要に応じて修正される」など、慎重の上にも慎重な米空軍側の姿勢が伺える「米空軍web記事」ですが、議会の提言ですので「表面上は前向き姿勢」を示さないといけないのでしょう
10日付米空軍web記事によれば
●10日、James空軍長官は上院「Appropriations」委員会で、米議会の「米空軍組織」に関する提言レポート(National Commission on the Structure of the Air Force report)で2014年に提案されている「I-Wing」構想について、Seymour Johnson空軍基地の空中給油部隊で試行を行う計画だと語った
●同長官は「米空軍は引き続き任務を全うしつつ、多機能を持つ軍としての効率性や効果性改善に取り組んでいる」、「I-Wing構想は、部隊間の垣根を除去して融合した部隊を形成する機会を提供する構想だ」と述べた
●先行して試行する部隊では、正規部隊である第911空中給油飛行隊が、予備役部隊である第916空中給油航空団(第6空輸航空団の隷下部隊)の組織に編入される
●現在でも2つの部隊は協力して運用しているが、異なる2つの指揮系統下で任務を遂行している。I-Wing構想下では、一つの組織としてより効率的に任務遂行することを目指す
●I-Wing構想は、画一的なパターンの部隊融合を進めるものではなく、部隊の立地、各組織の任務や扱う機体の種類などを考慮し、兵士や家族への影響や効率的な任務遂行の観点から、個々のケースにあった融合を狙うものである。また、現時点で優れた部隊への適用は想定していない
●また今回の試行は3年間を計画しているが、得られた教訓から、必要ならば期間の変更や今後のコンセプト展開にも変更があり得るとされている
●米空軍予備役トップのJames F. Jackson中将は、「第916空中給油航空団が試行に選ばれ光栄だ」、「この試行により、シナジー効果が生まれるか、得られた教訓が米空軍内の他部隊に活用可能かを見極める」と語っている
●Welsh空軍参謀総長は、「米空軍は、空軍司令部から前線部隊に至るまで、より良く組織を融合させ、効率的で効果的な組織を常々から追求してきている」、「I-Wing構想は、我々を更に高める構想の一つである」とコメントしている
//////////////////////////////////////////////////////////
James空軍長官、Welsh空軍参謀総長やJackson中将のコメントが、完璧な社交辞令に聞こえるのはまんぐーすだけでしょうか。
組織の改編は「ポスト削減」につながりますし、部隊の歴史や伝統を重んじる軍事組織の特性として、吸収される部隊構成員は複雑でしょう。ましてや、その改編が外部からの押しつけ観一杯だとすれば・・
恐らく米軍や国防省とすれば、I-Wing構想なんかより、国防省が要望している基地の再編や閉鎖(BRAC)を議会に許可して欲しいのでしょうし、BRACの方が遙かに効率化効果があると言いたいところでしょう。
また、個々の議員の私利私欲(選挙区の基地廃止で税収減など)でBRACが頓挫している現状に、怒り心頭でしょう
米議会の提言レポート(National Commission on the Structure of the Air Force report)を直接読んだわけではありませんが、シンクタンクや議会調査局等にいる米空軍OB等の有識者意見を踏まえた、地に足の付いた報告書だと想像します
ですから、その内容に取り組むことはマイナスでは無いにしろ、いろんな面で軍と議会の間の「摩擦の種」になりそうな案件です。
米空軍と議会の間には、A-10全廃問題、軍事衛星打ち上げロケットのエンジン調達問題、F-35や次期爆撃機計画を巡り、既に十分な「摩擦」が存在しますので、おなか一杯のはずですが・・・
米空軍と米議会の攻防:最近の状況
「A-10全廃問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22
「露製ロケットのエンジン」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「F-35の問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17