米ミサイル防衛庁MDAが次年度予算案を解説

Syring MDA2.jpg10日、2017年度予算案について米ミサイル防衛庁(MDA:Missile Defense Agency)長官のJames Syring海軍中将は、複雑化する脅威対策に関し、レーザー、宇宙アセット、GBI、THAAD、Aegis Ashore等への投資内容について説明しました
各軍種の装備老朽化が進み新装備購入計画が目白押しで、かつ対ISILや対ロシアで活動経費が膨らむ中、発言力が強くない米ミサイル防衛庁は予算面で「悲哀を」味わっていると以前紹介しましたが、全体の構図としてその傾向に変化無しと考えられます
それでも、以下の各項目は脅威の変化や技術動向を反映し、なかなか興味深いですのでご紹介します。それぞれの予算額が多いのか少ないのか判断する基準がありませんが・・・
11日付Defense-News記事によれば
Syring MDA.jpg●ミサイル防衛庁MDAの2017年度予算案は約8500億円を要求し、昨年定めた優先事項を維持しつつ、より複雑化し高度化する脅威対処技術の開発にも着手するものとなっている
●ミサイル脅威を撃退する次期レーザーシステムの基礎技術開発のため、約85億円を要求している
●またDEW(Directed Energy weapon)計画では、引き続き強力でコンパクトな2つのタイプのレーザー開発を行う
無人機MQ-9搭載用の、先進センサーを装備した目標照準システム開発に約110億円、また、無人機に搭載してブーストフェーズでのミサイル防衛に活用する、レーザー兵器の設計契約予算も含まれている
Syring長官は「レーザー重視は継続し、より高出力をより小型装置で可能となるよう追求していく。いつかハイパワーレーザーに発展させたい」と説明会見で述べた
●同MDA長官はまた、複数の異なるレーザー技術に取り組んでおり、企業にも協力を求めてコンセプトや潜在的な活用法を検討しているとも説明した
●そして「MQ-9等の無人機を活用した試験は、レーザー関連だけでなく、レーザー照射の照準をつかさどるセンサー能力の試験も行っている」と述べた
宇宙アセットやGMD強化へ
Syring MDA3.jpg●MDAはまた、弾道ミサイル破壊状況を把握するデータ収集を、宇宙に配備した商用ベースのセンサーネットワークで行うSKA(Space-based Kill Assessment)の構築に、約22億円を要望している
●なお「商用ベースのセンサーネットワーク」担当企業は、2017年度にSKAネットワークの打ち上げを計画している
●更に、北朝鮮やイラン発射の大陸間弾道弾ICBMから米本土を守るGMD(Ground-based Midcourse Defense)システムの不足能力を穴埋めするため、MOKV(Multi-Object Kill Vehicle)開発に約75億円を要望している
●MOKVは、アラスカとカリフィルニアに配備されたGMDに複雑で同時多数の脅威に初期段階で対処可能な能力を付与するものである
●MOKVが完成するまでの対処としてMDAは、GMDの「kill vehicle」の改良に取り組むため約3000億円を要望している
●また、約1200億円の規模で、現GMDミサイルの配備数を、現在の30発から44発に拡大する予算要求案となっている。予算が認められれば、2017年度末までに、44発すべてが配備完了する予定である
「Aegis Ashore」と「THAAD」について
Aegis Ashore Map.jpg●「European Phased Adaptive Approach」に関しては、まず第1段階で2011年トルコにAN/TPY-2(Xバンドレーダー)が配備され、第2段階として2015年12月にルーマニアでAegis Ashore systemが技術的運用可能態勢になった
●第3段階として、2つ目のAegis Ashoreを2018年にポーランドで態勢確立するため、約750億円を要求している。
●THAADシステムに関しては、MDAはリスクを受け入れたとも言える。MDAは引き続きTHAAD調達を行い、2017年度予算に24発のミサイル購入予算を約430億円要求し、2017年度末時点で計205発が陸軍部隊配備になる計画である
●しかし、陸軍が要求している9個のTHAAD大隊整備の残り部分には未着手のままである。現時点では、2018年までに7個大隊が編成できる予算しか確保できていない。ミサイルに関しては2021年までに400発以上を調達することになっているが
韓国へのTHAAD展開が具体的に協議され始めたようであるが、追加のTHAAD大隊調達は具体化していないMDA長官も「議論のテーブルから外れてはいない」と述べるにとどまった
THAAD1.jpg●Syring長官はまた「THAADの射程延伸を検討しているが、検討を加速する段階にはない」、「コンセプト検討を開始したが、THAADだけでなく、他システムも含めた全体で脅威も絡めて検討することが重要だ」と表現している
●CSISのKarako研究員は、「弾道ミサイル防衛への需要は供給を遥かに上回っており、最近のTHAAD韓国配備問題は、米陸軍と海軍のTHAAD、SM-3、PAC-3に対する要望にどう対応するかという問題を顕在化させている」と語っている
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弾道ミサイルやBMDに関しては、「海国防衛ジャーナル」が非常にわかりやすく、詳しいので推薦します
→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/
Syring海軍中将の発言と予算案の紹介だけで、分析まで踏み込めていません。特にMDA予算の「冷や飯度合」がどの程度なのかが気になります
また、韓国へのTHAAD配備協議に絡め、今後、BMD関連の報道や分析を目にする機会が増えると思いますので、その参考になればと思います。
MDA関連の記事
「SM-6がミサイル防衛に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「米ミサイル防衛が悲哀を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-22

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