8日付Defense-News記事は、2017年度予算案が米議会に提出されたばかりのタイミングながら、カーター国防長官がWork副長官に命じて、2018年度予算案検討における「鍵」となる7つの分野について、「SPR:Strategic Portfolio Review」を開始させていると報じています
具体的には、Work副長官が3日付で作成した関連「メモ」を入手し、7項目の方向性や担当責任者を紹介していますが、中国やロシアを意識した新たな技術開発の方向を検討するものとなっているようです
Work副長官とともに「Review」を共同リーダーとして統括するのは、国防省の「コスト分析・計画評価室長」Jamie Morin氏であり、実現可能性や開発経費に関する厳しいチェックを並行しながら行う構えとなっています
以下では、記事が伝える7項目をご紹介します。具体的な検討内容は「Defense-News社」も把握していないようですが、項目を眺めて米国防省の問題認識に思いを馳せたいと思います
Third Offset Strategy
●共同検討者:ケンドール開発調達担当国防次官
●これまでもご紹介してきた「第3の相殺戦略」とも訳される取り組みで、革新的な技術革新により絶対的な技術優位を維持確保し、中国やロシアといった対抗者に対する抑止力を確保する取り組み
Strategic Mobility in a Contested Environment
●共同検討者:米輸送コマンド
●米軍を作戦地域から遠ざけよう排除しようとするA2AD対応が、最近の米国防省の主要懸念事項だが、空中給油や輸送アセットへの脅威対処が特に大きな課題である。
●この問題への取り組みの一つが、米空母初の無人艦載機が偵察攻撃機から空中給油機CBARSに変更された背景にあると考えられる
Stress on the Force, Posture and Global Presence
●共同検討者:Wormuth政策担当国防次官と統合参謀本部
●国防省の主要課題の一つである、ハイエンドとローエンド対処能力の組み合わせをどの程度とするかを検討。対ISILから中国やロシア対処までの幅広い対処への備えをどうするかを考える
Ground Combat
●共同検討者:統合参謀本部とケンドール次官
●「アジア太平洋リバランス」では海軍と空軍への投資拡大が起こるが、陸軍は将来展望が無いまま、新規装備開発もほとんどないまま、置き去りにされている感がある。
●一方で、欧州でのロシアの活発化を考慮すれば、対処投資が必要と思われるが、どんな能力が必要か不明確である
Space
●共同検討者:国防省首席宇宙補佐官(空軍長官が兼務)
●潜在的敵対者が宇宙アクセス能力を獲得していることに大きな懸念あり。例えば米空軍は、これまで一つのアセットに多機能を集約させる方向にあったが、これを多数の小型アセットに分散するかどうかを具体的に検討している
Munitions(弾薬やミサイル)
●共同検討者:統合参謀本部
●カーター国防長官が2017年度予算案の説明で強化を明らかにしているように、既存のトマホークやSM-6ミサイルの効果や用途の増強に取り組んでいる
●他の既存弾薬やミサイルの改良を進め、調達量を精査することが、戦略を打ち立てる過程で必要
Counter-Power Projection
●共同検討者:Wormuth国防次官
●中国やロシアが影響力行使の範囲拡大を図る中で、米国がこれにどのように対応していくか
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「Strategic Mobility」や「Ground Combat」に関しては、これまで取り上げていませんでしたので、今後注目したいと思います
目新しくはないような印象ですが、今から手を付けておく必要あり、つけざるを得ない、切羽詰っている・・・項目なのでしょう。
今後の軍事ニュースを見るうえで、上記カテゴリーを「フォルダー」として準備しておくのも一つの方法かもしれません
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