1日、米国防省webサイトは新年を飾るニュースとして2つの記事をアップしました。その一つは対ISIL空爆を継続して実施しており、24回の攻撃でシリアやイラク勢力の支援を行ってISIL排除の努力を継続しているというものです。
そして本日ご紹介するもう一つの「新年トップニュース」は、Selva統合参謀本部副議長が大晦日にICBMサイトで24時間体制勤務についている若手士官を電話で激励し、併せて昨年秋から冬にかけて訪問した「核抑止3本柱部隊」の様子を振り返る記事です
人里離れた場所での勤務を強いられ、装備も老朽化し、昇進やキャリア形成の道が閉じられたとみなされ、士気低下が著しく不祥事が続発したICBM部隊の立て直しに、米国防省や米軍が取り組む姿勢をアピールする記事ですが、実態のほどはどうなのでしょうか・・・。厳しき予算の中・・・
1日付米国防省web記事によれば
●Selva副議長は12月31日の深夜、ノースダコタ州の辺鄙な場所の地下20mにあるICBM管制施設で勤務する運用勤務員に電話した。「勤務クルーに礼が言いたかったのだ」と副議長は語った
●「国家の安全保障にとり、彼らの仕事がどれだけ重要かを認識していることを伝え、彼らを誇りに思う気持ちを伝えたかったのだ。それが最も大事なことの一つだ」と語った
●副議長は、自身の勤務でも戦略空軍司令官の副官として核任務部隊とつながりがあり、その重要性を認識しているが、兄弟の一人がICBM管制士官だったこともあり、特に関係が深いと感じている
●ただし、戦略原潜の勤務員とは直接連絡が取ることが困難なことは同副議長も承知しており、「チャンスを見つけて激励したい」と語っている
●昨年7月に副議長に就任以来、Selva大将は核抑止の3本柱部隊を視察し、運用クルーの指揮官、副指揮官、教官、更には彼らのキャリア形成のためにどのように訓練が行われ、核任務に耐える能力をどのように付与されているのかを確認して回った
●8月にはICBM前線基地を訪問し、その厳しい勤務環境の中に分散しての勤務を強いられていることを確認した。
●また9月にはB-2爆撃機部隊を訪問し、具体的に出撃する手順を視察して核兵器搭載時のチェックリストが厳正に運用され、要員養成が常に見直されて適正化されていることも確認した
●同時に、B-2爆撃機部隊のような小さな組織の構成員を、慎重にキャリア管理していくことの重要性を再認識した
●最後にオハイオ級戦略原潜USS Alabamaを視察し、また訓練施設を確認し、45分間の模擬行動訓練を確認したが、士官と下士官が有機的に連携している様子を力強く感じた。
●また訓練施設(Trident Training Facility)やそのカリキュラムが私がこれまで見た中でベストの教育体制にあることを確認できた
たった5年前は大きく違った
●昨年ICBMサイトを訪問した際、学位を持ち戦技課程を修了した若い大尉が、仕事への誇りと将来の可能性と希望をしっかりと語ってくれたことを思い出す
●しかし、たった5年前には、ICBM士官には未来がなく、米空軍内で昇進するにはICBM任務以外の仕事で成果を上げなければだめだと言われていたのだ。そんな風に我々はICBM部隊を扱ってきたのだ
●今ではキャリア管理が見直され、教育を受ける機会も整備され、ICBM職域でリーダーを目指すよう動機づけられている。若い勤務者が彼らの任務の重要性を理解し、与えられているチャンスについても理解しており、これが極めて重要だと思う
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数々の不正や怠惰な勤務ぶりが発覚してきた核兵器運用部隊で、その背景が米空軍全体に根深く蔓延する「組織的なICBM部隊無視」や「核兵器運用士官の放置」等々であるとこが明らかにされています。
そんなに急に変われるのか? 士気低下の大きな要因の一つである「老朽装備」対策が、予算不足で急激に進まない中、本当に記事のような「士気改善」がみられるのか?
継続的にフォローが必要な大きな問題です。同様にロシアや中国の核運用部隊がどうなっているのかとても気になります
核兵器運用部隊の立て直し
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「ICBMの後継検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-1
「内部崩壊核部隊に対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米海軍トップが危機感訴え」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-10
「ICBM部隊に不合格判定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-15
「ICBM部隊で士官17名処分」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-11
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1