12月28日付米海軍協会web記事が、記者や専門家や海軍関係者の意見を総合し、2015年の重要事象や事件を6つリストアップしています。
特に番号を振って順序を付けているわけではありませんが、記載順序がインパクトの大きさ順を表現しているのかもしれません
米海軍協会の選定ですが、「記者や専門家や海軍関係者の意見を総合」した視点というのがポイントで、米国内での重要度が伺えるかと思います
これまでご紹介していない事案もありますので、詳しく理解していないことも含まれますが、これを機会にご紹介します
空母の「空白」が現実に
●2015年の秋、中東に置いて米空母が不在となる「空白期間」が2ヶ月間も生じた。10月13日に空母Theodore Rooseveltが担当地域を去り、12月16日に空母Harry S Trumanが中東に到着するまでの2ヶ月間である
●地域コマンド指揮官等のニーズに基づく「demand-based model」から、提供可能な戦力をベースに艦艇軍派遣を行う「supply-based model」への変更を米海軍が採用したため
●背景には、要請に応じて派遣期間を延長したりしていると、艦艇の物理的な維持が困難になり、また兵士により派遣期間を事前に明確にする事ができなくなることで士気に負の影響があるなどの事情がある模様
●シンクタンクCSBAやマケイン上院議員は、これら空母対策に「日本への2隻目の空母常駐派遣案」を検討するよう提案している
「CSBA:疲弊する艦艇部隊へ対策、日本に2隻目空母案も」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-22
欧州で大規模な初のミサイル防衛演習
●10月にスコットランド沖の海上で、米国を含む欧米9カ国(MTMDフォーラム10カ国のうち9カ国が参加)が参加し、防空&ミサイル防衛演習(IAMD)を行った。参加国はカナダ、仏、伊、蘭、ノルウェー、スペイン、英、米と独(人だけ)が参加。
●初めての米国演習場外でのSM-3発射、欧州での初めての弾道ミサイル迎撃、初めてのスコットランドでのSM-2発射等々を行い、地上配備のBMDシステムに焦点が当たりがちな中で、画期的な演習だった
●イージスシステムを開発するLockheed Martinは、多数の参加国間の追尾や交戦の連携具合を観察し、教訓を得た
「進化するイージスIAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「黒海NATO演習と露軍反応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03
地上配備型イージスシステムが稼働へ
●欧州で進んでいる「European Phased Adaptive Approach」の一環である、BMDシステム「Aegis Ashore」のルーマニアDeveselu施設が、12月後半に「技術的能力獲得」を宣言した
●同様のポーランド施設も年末までには完成する予定になっている。これら東欧の施設は、欧州の他のBMDアセットとの連接に更に数ヶ月を要し、2016年夏までにはNATOコントロール下で運用を開始する
●施設の建設は米ミサイル防衛庁が担当し、欧州米海軍が核施設やアセットの連接を監督し、NATOが運用を司る事になっている
●12月10日には「Aegis Ashore」の試験がハワイのテスト施設で行われ、C-17輸送機から投下された目標のSM-3による迎撃に成功した
BMD「Aegis Ashore」関連の記事
「米議会が日本配備を要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-19
「米BMD予算は悲哀を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-22
「地上配備型イージス」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10
ミサイル駆逐艦Sullivansで爆発事故
●7月にミサイル駆逐艦Sullivansが訓練で発射したSM-2ミサイルが、発射直後に艦艇から10mほどの距離で爆発した。幸い人的被害はなく、艦艇への被害も軽微なものだった
●調査の結果、SM-2のロケットモーターが製造から25年経過した「Mk 104 Mod 2 DTRM」で、製造企業はスペースシャトルの爆発事故でブースターを製造していたThiokol Corporationだったことが判明
●米海軍は同社製のロケットを使用しているSM-2を、「戦時のみ使用」の制限下に置くことを決定
NIFC-CA装備の空母攻撃群が初展開
●3月、NIFC-CA能力を備えた初めての空母Theodore Rooseveltが、同じくNIFC-CA対応のイージス艦USS Normandyや、NIFC-CAネットワークの中核となるE-2Dの飛行隊を従え、初めてのNIFC-CA対応空母攻撃群として中東に向け出発した
●また10月には、NIFC-CA構想に加わり「key node」となる予定のF-35C型が空母Eisenhowerに到着し、空母攻撃群との融合の第一歩に着手した。
●なお同F-35C型機は、米海軍のテスト評価飛行隊に所属する機体である
米海軍の作戦構想関連
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「日本もNIFC-CAに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23
「豪軍がEA-18GでJericho計画へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-01
「SM-6でBMD成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「SM-6で艦艇が遠方目標対処へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「なぜ8機EA-18Gが必要か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-13
「ステルス機VS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「航行の自由作戦」
●ホワイトハウスは国防省に対し、航行の自由作戦に関しては公式に何も言うなと命じていた
●そして、もし記者達に質問されても、オンレコで細部の行動については語るなとホワイトハウスに命じられていた
●しかしリークにより作戦の概要が明らかになると、議会でマケイン上院議員に追求されたカーター国防長官は、作戦の細部について認めざるを得なかった
激動:中国軍と「航行の自由作戦」
「米海軍筋が航行の自由作戦を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-01
「海上民兵:maritime militia」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-04
「西沙諸島に中国戦闘機展開?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02-1
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30
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2016年は、米海軍にとって平穏な年であることを祈念いたします・・・無理でしょうが・・・