米国防長官が人材確保・育成策第1弾を発表

Force of the Future2.jpg18日、カーター国防長官はGeorge Washington大学で講演し2月に就任直後から取り組みを宣言していた人材確保・育成策「Force of the Future」計画の第一弾を発表しました。
数ヶ月以内に更なる計画を発表すると講演の中で述べており、同長官の意気込みが感じられます
カーター長官の念頭には、世界情勢や科学技術の素早い動きに対応して行くには、必要な分野に必要な人材を適時に柔軟に確保し、また養成した貴重な人材の流出阻止が極めて重要であるとの危機感があり、出来ることから積極的に実行に移すべきとの「スピード重視感覚」があります
長官は就任直後から、シリコンバレーの有力IT企業や軍需産業や有識者と複数回議論を重ねており、これに国防次官(技術開発&兵站担当)や副長官当時の経験を併せ、かなりの思いを込めて施策を推進していることが伺える講演で、「ミリオタ」の方より、人事施策に頭を悩ませる管理職一般の方にお勧めの内容です
施策の必要性や問題認識部分は上記で紹介した事項で十分ですので省略し、具体的な施策に言及している部分の概要をご紹介します
本日は講演概要を紹介する米国防省web記事でご紹介しますが、全文にご興味のある方は以下のトランスクリプトを
→http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/630415/remarks-on-building-the-first-link-to-the-force-of-the-future-george-washington
または国防省発表の「Fact Sheet」5ページで
→http://www.defense.gov/Portals/1/features/2015/0315_force-of-the-future/documents/FotF_Fact_Sheet_-_FINAL_11.18.pdf
インターン制度拡充で良い人材を
Force of the Future5.jpg将来の優秀な文民職員を引きつけるのに欠かせない施策である。インターン制度をより拡充して充実させ、より効率的に運用し、優れた将来性のあるインターンを国防省職員に招き入れたい
●インターン制度で受け入れる職種や部署については、webサイトの「www.defense.gov/LinkedIn」でまもなく公表する
米国の優秀な技術者や外部組織を活用
●「Defense Digital Service制度」を構築しつつ有り、これにより国防省以外の技術者を、特定の期間又は特定のプロジェクトのために特化して招き入れ、国防省が抱える複雑なIT関連問題の解決に、より革新的で機動的な対処を図る
●例えば、企業家精神を持つ特定分野の高練度者を、特定の困難なプロジェクト担当の国防省高官と共に2年間程度業務させ、国防省に活用することも考えられる
Force of the Future4.jpg●逆に、国防省職員に時間を与えて(国防省以外の組織に派遣し、)新たなスキルを身につけさせ、外部有識者との関係を構築し、アイディアを国防省に持ち帰らせることを可能にしたい
●具体的には、優秀な国防省職員を1年間企業に派遣する「Secretary of Defense Corporate Fellowship program制度」の対象者を倍増し、下士官も対象者に含める。対象企業には、Accenture, Google, SpaceX, Intel, Amazon, EMC等々が含まれる
●より多くの国防省員が、従来の既定路線エスカレーターから一端降り、キャリアを傷つけること無く、再び新たな力を備えて復帰する制度を支援したい。最後には国防省のためになるはずだ
軍人用の長期有給休暇(sabbatical)や年金改革
Force of the Future3.jpg軍人が2~3年の有給休暇を活用し、学位取得や家族編制や技能取得に当てる「Career Intermission Program制度」を、継続するよう議会に要請する
●本制度を数年前に活用した海軍パイロット夫妻の例を紹介したい。共にF-18操縦者だった夫妻は、本制度を利用し、夫がMBAを、妻がハーバードで広報活動の学位を取得、更に子供も設けた。夫は今、海軍長官の首席副官で、妻は海軍広報部で勤務することになっている
現状では20年以上軍で勤務しないと退職後の特典が享受出来ないが、8割以上が20年未満で退職しており、何の恩恵も受けないで過ごしている
●この制度を我々は変更する。数年先にスタートする制度では「簡易な401Kのようなプラン(個人年金)」を提供し、いつ転職しても何らかを得る機会を提供する
「Big data」活用で適材適所を推進
●「Big data」活用で、国防省での勤務や生活をより魅力的なものにしたい。例えば「LinkedIn-styleの職務希望申請」を拡大し、各個人の希望業務やポストと組織ニーズのマッチングをより円滑に進めたい
●また、組織構成員の資格や能力やタレントに関する膨大なデータを、「Big data」分析活用で処理し、有する人材を最大限に活用したい
Force of the Future.jpg●(国際関係学専攻の学生聴衆に対し、)国防省が皆さんの考えるキャリア上で、貢献の対象になること知って欲しいし、皆さんに値する敬意と威厳を持って受け入れる用意がある事を知って欲しい。
●今日お話ししたのは、「Force of the Future」の一部で有り、今後数ヶ月で更なる施策を発表する予定だ。士官の昇任管理や文民職員の管理改善等々についてだ
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国防省発表の「Fact Sheet」は5ページにまとめられ、細かな施策が21項目コンパクトに解説されています。
国防省内の全職員と全兵士に魅力化施策を訴え、国防省外の企業や学会や研究者に協力を呼びかける事を狙った「作り」と見ました。力が入っていますし、必死さが伺えます
どれだけ効果を生むか、本当に米軍や国防省機関で受け入れられるのか? 企業や学会や研究者の協力が得られるのか・・・? 
細部の制度設計が気になりますが、例えばサイバー分野の報酬面で、民間企業には到底及ばない国防省の人材確保に効果が見られるでしょうか・
いずれにしても、2月の就任直後に宣言した「Force of the Future」計画を、9ヶ月余りで具体化実行する勢いに改めて感嘆です。
「Force of the Future」特設ページ
→http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0315_Force-of-the-Future
カーター長官の「中露対処策」講演
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-13
Work副長官の「Third Offset Strategy」解説
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
シリコンバレーとの連携
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

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