速報報告:中国の「海上民兵:maritime militia」

maritime militia.jpg2日付Defense-News記事は、同日付で米海軍大学エリクソン氏がweb投稿している中国の「海上民兵:maritime militia」に関する記事を要約しつつ、駆逐艦ラッセンによる「航行の自由作戦」に際し、中国海軍艦艇がおとなしかったのに対し、中国商船や漁船が「それほどおとなしくなかった」事例を分析し、「海上民兵」の存在を訴えています
エリクソン氏は投稿で、米国でまだ認知不十分な「海上民兵:maritime militia」の存在が今後大きくなると予想し、その生い立ちや性格等について紹介しており、関連の過去事例や文献も数多く紹介しています
Defense-News記事はエリクソン投稿を要約して紹介していますので、更に掻い摘んで、適当に好みでつまみ食いしてご紹介します
なお「航行の自由作戦」で、中国商船や漁船が「それほどおとなしくなかった」状況は、Defense-News記事も引用している以下の過去記事でご確認ください
「米海軍筋が語る航行の自由作戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-01 
またエリクソン氏の投稿は
→http://cimsec.org/new-cimsec-series-on-irregular-forces-at-sea-not-merely-fishermen-shedding-light-on-chinas-maritime-militia/19624
2日付Defense-News記事によれば
maritime militia2.jpg10月27日の駆逐艦ラッセンによる「航行の自由作戦」に際し、中国海軍艦艇がおとなしかったのに対し、商船や漁船はそれほどおとなしくなかった。商船や漁船はラッセン前方を安全距離を保ってはいたが、横切る等の行為を見せた
●通常の海上交通船舶以外に、漁船がラッセン周辺海域に出現し、「ラッセンの行動を予期して」行動していたと、30日に米海軍筋は語った
中国は民間商船や漁船を政府のシンパとして活用して外国船舶を妨害等しており、専門家は誰がミステリアスな船等に乗船しているのか注意深く観察分析している
●米海軍大のエリクソン氏は2日の投稿で、「当該海域には普段ほとんど漁船は活動しておらず、(ラッセン周辺で活動していた)漁船は海上民兵であることはほぼ明確だ」としている
●同氏は「ロシアがウクライナ内で反政府勢力little green menを使用しているが広く認知されているように、中国は南シナ海でlittle blue menを活用しているが、米国では認識が不十分である」と問題認識を示した
maritime militia3.jpg●そして「このような扱いが難しい人員や船舶の存在は、西側の対処をより難しくしている」、「2009年に米海軍の音響観測船Impeccableが妨害を受けた事件でも、海上民兵が直接関与していたと我々は追認している」と述べている
●更に「2014年に3か月半にわたりベトナムと中国が石油採掘リグを巡って対立し、中国船と衝突したベトナム船が沈没した事案、2014年3月に比と中国がSecond Thomas Shoalを巡って対立した際も、同様の(海上民兵の)関与を突き止めている」と述べている
●そして「ラッセン作戦時に発生した事態も、漁船が偶然居合わせたとは考えにくい」、「中国の海洋ドクトリンを読めば、そのようなテクニックが一般的なものだと分かる」としている
更にエリクソン氏が語る「海上民兵」
Erickson.jpg漁船等に乗船した海上民兵は見分けがつく。多くの場合「制服」を着用しており、制服姿の写真を多く入手しているし、中国軍出版物でも「制服を着れば兵士として行動し、制服を脱げば漁民として活動する」との記述がある
●「中国は2通りの海上民兵の用法を使い分けられ、漁民の場合、米国と同盟国は制約された対処しかできなくなる」、「中国は米軍等の対処を困難にするため、海上民兵を活用するだろう」
●「海上民兵」の出身に関しては、「地域の労働者や漁民、除隊した元兵士等が複雑に組織管理されている。最初は中国軍の地方組織で採用するが、動員時は海軍当局の指示を直接受ける形のようだ」、「平時は中国軍地方組織に所属するが、任務には海軍や海上保安機関(海警)支援も含まれ、必要時には柔軟に必要とされる組織を支援する」
●「海上民兵」には10以上のグループがあるが、いくつかは前線組織として扱われている。多くは輸送や修理や沿岸監視等の作業的な任務に就いているが、少数のエリート海上民兵は装備もよく訓練され、より高度な任務を帯び、有事の役割も理論的には担う
maritime militia5.jpg●更に「西側ではよく理解されておらず、海上民兵は奇襲や混乱を引き起こしうる点で中国軍に有効な戦力である」、「仮に認識していても、我の規定からすれば非常に対応が難しい」、「中国側が海上民兵を、愛国精神に満ちた漁民や地域住民だと主張するのは、彼らの得意なプロパガンンダだ
●それでも「海上民兵の存在を認識し、その出現を予期しすれば、限定的な能力しかない彼らをより適切に扱うことができるだろう」、「また仮に海上民兵だと暴露されれば、中国軍への対応も変わるだろう
●今年初め、米中は「海上での不意遭遇に際しての取り決め:Code for Unplanned Encounters at Sea:CUES」に合意しているが、海上保安機関(海警)や海上民兵は対象になっていない
海警や海上民兵が南や東シナ海で「より汚い」任務を担う可能性が高く、我々の準備はまだ不十分と言わざるを得ない
///////////////////////////////////////////////////////
日本人にとっては、尖閣諸島に「武装漁民が上陸したら・・」の議論は比較的なじみ深く、本年夏にもこれをメインテーマとして「シームレスな対処」を目的に日米ガイドライン見直しが行われたこともあり、それほどサプライズではないでしょうが、米国では認知が不十分なのでしょう
maritime militia4.jpgそうであれば、これを機会に中国の「海上民兵:maritime militia」への理解を深めていただきましょう・・・。
でも、今ASEAN国防相会議が開催されているため、恐らく日本の安保関連記者団は「皆さんクアラルンプールに御出張」なのでしょう。また日韓首脳会談のフォローにお忙しいのかもしれません
しかし、10月31日には中国軍が西沙諸島「Woody Island」に中国海軍J-11戦闘機を派遣して訓練したと強く示唆する写真を公開し、一気に南シナ海の「空ドメイン」で優位に立っていることをアピールしました
「中国が海軍J-11戦闘機を西沙諸島に派遣か」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02-1
このような重要な中国の動きが報道されないのは、日本で話題にならないのは・・大丈夫でしょうか? 日本でもっと報道されるべきと思いますが・・・
海上自衛官が「海上民兵」を解説
→http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-056.html
ヨシハラ教授が「中国海軍ゲリラ戦」を語る
「Yoshihara博士の来日講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
エリクソン氏の「海上民兵」投稿
→http://cimsec.org/new-cimsec-series-on-irregular-forces-at-sea-not-merely-fishermen-shedding-light-on-chinas-maritime-militia/19624
エリクソン氏が注目の米海軍筋話
「米海軍筋が語る航行の自由作戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-01

タイトルとURLをコピーしました