米軍北極特殊部隊削減と米露の北極戦力差

Alaska Arctic.jpg10月30日、韓国訪問とASEAN国防相会議への参加のため8日間のアジアツアーを開始したカーター国防長官がアラスカに立ちより、オバマ大統領のアラスカ訪問に続き「北極は重要だシグナル」を出しています
しかし、アラスカ州選出の共和党議員は精強な極地対応部隊の削減が予定されることや、ロシアに遙かに劣る米国砕氷船の体制や、米国防省の陳腐な北極戦略計画を厳しく批判しており、「先立つものがない」又は「視線だけで身体がその方向を向いていない」状態が明らかになっています
1日付Defense-News記事によれば
Arctic ship.jpg●10月30日、アラスカ州のフェアバンクスの陸軍基地を訪問したカーター国防長官は、氷の急激な減少やロシアによる猛烈な航路開拓や海底資源開発への取り組みを受け、長らく続いてきた北極圏の安定が脅かされていると語った
●カーター長官は「北極はどんどんその重要性を増す地域となっている」、「米国にとって重要だし、他国にとっても重要性を増している。重要なのは地域の平和と、規範に基づく秩序である」と訴えた
2013年にオバマ大統領が北極圏に関する国家戦略を発表した際、「平和で安定し、争いの無い北極圏」を描いたが、その方向には向かっていないようだ
●(北極航路や海底資源以外にも、)北極圏には米国のミサイル防衛システムが配備され、北半球の移動を短縮するため北極上空を民航機が飛び交っており、米国にとって鍵となる重要地域である
Obama Alaska.jpg●しかし、豊富な地下資源確保を狙うロシアが今夏に数千名参加の北極演習を行った一方で、厳しい予算により、米国防省はアンカレッジに所在する約2600名の極地訓練を受けた部隊を削減しようとしてる。
●またオバマ大統領が9月にアラスカを訪問した直後には、5隻の中国海軍艦艇が初めてベーリング海の米国沿岸で活動するなど、北方を視野にした活動を各国が活発化している
2013年に米国防省が発表した北極戦略文書は、当地域における米軍の急激な増強は他国軍との軍拡競争を招くとした姿勢を示し、「北極圏に軍備増強されるとの認識の広がりは、軍備競争感覚を導くリスクを帯びている」と記している
アラスカ選出議員の批判
Sullivan Alaska.jpg●Dan Sullivan上院議員(共和党)は、北極圏で米軍軍事力を緊急に増強する必要性が忘れられていると訴えている
●同議員は「来週ロシアがアラスカに攻めてくるなどと言うつもりはない。しかしこのような戦略環境下で、精強な訓練された極地対応部隊を削減する事が意味あることなのか? 戦略的に理解できない」と語っている
●同議員は、2012年にプーチンが3度目の大統領任期を開始した以降の北極支配施策を取り上げ、ロシア北極軍には4個旅団が所属し、2020年までには50飛行場が整備され、長距離爆撃機による警戒飛行も増加している状況を指摘した
●また、原子力推進型を含む現29隻の砕氷艦と11隻の増強建造計画の存在を同議員は訴えた。開設予定の多くの北極圏の露軍施設はソ連時代に開設されたが、冷戦終了後の混乱で放置されていた基地等である
Arctic.jpg●Sullivan上院議員によれば、一方で米国保有の砕氷艦は僅か2隻で、しかもそのうち1隻は故障中の惨状である。
●同議員は最低追加で4隻の砕氷艦が必要だと訴えつつ、現在の米国防省の北極戦略は「真剣に検討された軍事戦略文書だとはとても考えられない」と語っている
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
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カーター長官は1日には朝鮮半島の板門店で南北対立の前線を視察し、2日には韓国の首脳達と会談するのでしょう。
Korea DMZ.jpgその後はASEAN国防相会議で、ここでは「航行の自由作戦」を柱に、南シナ海情勢について説明し、米国の今後の同海域での軍事的姿勢について理解を求めると思われます
ASEAN諸国の南シナ海問題での姿勢は様々で、ASEANの「緩やかなまとまり」を象徴する状況ですが、ベトナムやフィリピンと、タイやインドネシアやマレーシアとの空気感の違いがどんな風に現れるのか注目されます
プーチン様には困ったもんです。ストレートに明確な戦略の基礎に、まっしぐらですから
北極&極地関連の記事
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
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「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

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