レーザーを航空機の正面以外に撃つ場合、特殊な技術が必要
この技術が無いと、側面や下方に良いビームが形成出来ないとか
15日付Lockheed Martin社の発表によれば、ジェット機の音速に近い巡航飛行で必要な、機体の進行方向以外へのレーザー発射を可能にする技術を、約60回の試験飛行により確立できた模様です。
米国防省の技術研究機関DARPAや米空軍研究所AFRLからの要請に基づき、2014年からビジネスジェット機の側面にレーザー発射装置(記事では半円形のturretと呼称)を取り付け、「low-costな飛行試験」で技術成熟にこぎ着けたようです
15日付Lockheed Martin社の発表によれば
●軍用機に対する脅威は、敵航空機にしろ敵ミサイルにしろ、あらゆる方向から襲ってくるので、航空機搭載レーザー兵器は全周に発射出来る必要がある
●しかし物理学の法則により、音速近くで飛行する航空機の場合、機体と大気との摩擦で生じる振動(turbulence)に対処出来ないと、レーザーを機体正面の目標にしか有効に発射出来ない
●この問題を解決するため、LM社はDARPAやAFRLの要請を受け、(機体に装着するレーザー発射装置)「laser turret」のプロトタイプ開発を成し遂げた
●「空力対処光学制御turret:Aero-adaptive Aero-optic Beam Control」は、音速近くで飛行する航空機から、360度方向にレーザーを発射可能にする初めての「turret」である
●飛行試験経費を抑えるため、ビジネスジェット機に搭載して2014年から約60回行われた飛行試験で、低出力レーザーが当該turretから発射され、全ての方向でその性能が証明された
●最新の航空流体力学を生かして「turret」形状を設計し、「deformable mirrors:変形可能型ミラー」を「turret」内に活用することでビーム形成と目標照準を確実にすることで、飛行中の空気抵抗による振動の影響を局限することに成功した
●仮にこの技術が無かったら、レーザービームを形成する事が出来ず、霧でビームが分散されるような状態になる
●この技術により、地上車両や艦艇に装備されるレーザー兵器と同様に、レーザーの利点を活用出来る。DARPAとAFRLはこの技術を活用し、高速航空機へのレーザー兵器搭載について検討することになる
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レーザー兵器の大きな欠点は、雲や雨など気象現象に影響を受けることです。特に日本の場合は、この点は避けられません
しかし利点も多いのです。
●速度が速く、ミサイルよりも同時多数目標への対処能力が高い。従って、中国の弾道・巡航ミサイルの飽和攻撃への対処能力が高い
●電力が発生源なので、弾薬やミサイルと異なり、搭載量が無限大に近いし、物資補給を考える必要が実質ない。従って、物資補給が困難で、米大陸から遠く離れた西太平洋地域での作戦に適している
●直進性が有り、照準が容易。また光線の力をコントロールしやすく、多様な目標に柔軟な対処が可能
●弾薬やミサイルに比べ、1発の単価が安い
装備開発から聞こえてくる課題は
●装置の小型化、装置の冷却、精密な照準を実現する機材の精密さから来る「機材の脆さ克服」、破壊力に必要な出力確保、目標を外した場合の副次的被害極限策・・・等々です
●上記を克服する可能性のある「光ファイバーレーザー」を、米陸軍用に製造開始の報道も有り、「戦場の様相を根本的に変える可能性がある兵器」として、特に米国国防関係者から注目や期待を集めています
ロッキード社のレーザー事業webページ
→http://www.lockheedmartin.com/us/products/laser-weapon-systems.html
最近で最も大きなレーザー兵器ニュース
「米陸軍レーザー兵器製造開始」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16