「兵器技術の急速な拡散」を象徴する出来事
7日、パキスタン軍のメディア担当部長であるAsim Bajwa少将がツイッターで、「パキスタン製の無人武装攻撃機で、パキスタン北西部に所在した3名のテロ組織主要人物を殺害した。細部は後ほど公表する」と発表しました。
外部の専門家は、予想以上に高度な無人機攻撃が行われたことに驚くと共に、その状況から中国の支援を受けて無人機がパキスタンで製造され運用されている可能性を示唆しています。
いずれにしても「技術の拡散」を象徴する出来事であり、パイロットのポスト確保という「職域防衛」から無人機導入に極めて消極的な「戦闘機命派」に聞かせたい出来事です
8日付Defense-News記事によれば
●7日発信のツイッターでメディア担当Bajwa少将は、「パキスタン製の無人武装攻撃機Burraqが、Shawal渓谷のアジトにいた3名の著名テロリストを殺害した」と発信し、初めて無人攻撃機による作戦活動を公表した
●Shawal渓谷は、かねてよりパキスタン軍がTTP(タリバンの分派)掃討作戦を行っている北部Waziristan地区に属する場所である
●以前在パキスタンの豪州武官であったCloughley氏(現在は地域研究者)は、「同無人機と運用に必要な指揮統制システムの洗練度は、多くの専門家が想定していた以上である。当然多くの関係者は、中国からの支援や協力があったものと考えるだろう」とコメントした
●また同氏は「パキスタンにはNESCOMとの無人機を製造する企業もあるが、今回明らかになったレベルの無人機技術を保有しているとは考えにくい」と付け加えた
●今回使用された無人機Burraqと同類の無人機Shahparは、ライセンス生産では無いにしろ、中国の無人機「CH-3」を基に開発されたと一般には考えられていたところである
●北部Waziristan地区では、米軍による無人機攻撃で多数の民間人犠牲者(結婚式や葬式の誤爆等も)が出ており、既に同地域の部族間には米国だけでなく、パキスタン政府に対する憎悪も広がっているが、無人機の国籍を地域部族は判別出来ないため、パキスタン軍が無人機攻撃を躊躇するとは考えにくいとCloughley氏は見ている
●元パキスタン空軍操縦者は、パキスタン軍は攻撃目標の識別に関し米軍より優れており、より有効に無人機攻撃を行えると語っている。また、長時間連続運行でき、援護機の随伴を考えなくて良い無人機は、パキスタン空軍に新たな時代をもたらすとも表現した
●同元操縦者はパキスタン軍内の問題として、陸海空軍がそれぞれに無人機を導入し、好きなように作戦構想を描いているが、軍種間の横の連携や任務分担がほとんどなされていない点を挙げ、何らかの文書による指示や統制が必要だろうと指摘した
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無人機の活用や技術拡散は猛烈に進んでいます。
「ドローン」との言葉も、今年度になってから急速に「一般化」していますが、ダイヤモンドより硬い頭で、太平洋戦争時から全く変わらないメンタリティーを持つ自衛隊(特に航空自衛隊)幹部は、その変化を感じられないのでしょう。
「太平洋戦争時から全く変わらないメンタリティー」に気づいて頂くため、太平洋戦争での旧日本軍の作戦行動を組織論的に分析したベストセラー「失敗の本質」が描く、旧日本軍の失敗の「原因」をいくつかご紹介します
「戦闘機命派」が牛耳る自衛隊組織の皆様に、ご参考になれば幸いです
記事:書籍「失敗の本質」から今こそ学べ! より抜粋
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
同書が指摘した「失敗の本質」とは
●旧日本軍は、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった
●戦略志向は短期決戦型で、戦略オプションは狭くかつ統合性が欠如し、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的微修正の繰り返しで、雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、敵の出方等による修正無しだった
●本来合理的であるはずの官僚主義に、人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在。システムよりも属人的統合が支配的。人情を基本とした独自の官僚主義を昇華
●資源としての技術体系は一点豪華主義で全体のバランス欠如。
●学習が、既存の枠組み内でのみ強化され、かつ固定的
本当に今の自衛隊を描写したような分析です!