6月25日、米空軍の爆撃機を運用する第8空軍司令官Richard Clark少将が下院軍事委員会で証言し、米空軍の全ての爆撃機(B-1、B-2、B-52)が現在機首及び企業選定に入っている次期爆撃機LRS-Bに置き換わるだろうと述べました
これまで、空軍予算の最優先3本柱(他にF-35とKC-46A)の一つとされ、80~100機調達すると言われてきたLRS-Bですが、ぼんやりと「B-2とB-52」の後継のイメージという人が居たくらいで、爆撃機全体の将来像が語られませんでしたが、少しずつ明確になりつつあるようです
6月25日付米空軍協会web記事によれば
●Clark第8空軍司令官は下院軍事委員会で、最終的に全ての米空軍爆撃機はLRS-B(Long-Range Strike Bomber)に置き換えられるだろう、と述べた。そして、現有の爆撃機が引退したら、「LRS-B(だけ)が長距離爆撃機となろう」とも表現した
●しかし、(現有爆撃機の減勢や引退時期、LRS-Bの導入ペース等を一覧表にしたイメージの)爆撃機ロードマップは、現在検討作成中であると述べるにとどめた
●一方、B-52を「今後25年以上も継続運用する」前提である事を考慮すれば、Clark少将の個人的意見として「B-52のエンジンを更新することが不可欠」だと述べた。現装備の「powerplants:エンジン」は50年以上以前の製品で維持整備の所要が増大しており、部品も不足し始めてていると訴えた
●また更に、B-52に新エンジンを搭載することが出来れば、燃費が向上し、より高い高度を飛行でき、搭載兵器量も増え、爆撃機として必要な要素全てを向上させることが出来ると訴えた
●B-52のエンジンに関しては、米空軍グローバル攻撃コマンドのStephen Wilson司令官も最近、軍需産業と予備的な議論を開始したと発言している
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確か約5年前までは、現有爆撃機の減勢と新機種の導入を組み合わせた「戦力構成図」のようなものをいろんな所で見かけましたが、「強制削減」の話が出てからは将来を見通した設計図を見ることはなくなりました。予算の不透明さを反映しています
一方で、仮に強制削減がなくとも、米海軍が計画する空母と戦略原潜と攻撃原潜と艦艇の更新は、価格高騰と予算の横ばいで完全に不可能なことが明白になりつつあるように、米空軍でも戦闘機と爆撃機の両立、更に核兵器部隊を維持することが難しいことは単純計算で見えています
Clark第8空軍司令官が言う「爆撃機ロードマップ」を作成に当たる担当幹部は、夢の予算を前提にしないと図が描けないでしょうし、ミリミリと米空軍司令部や統合参謀本部とのすり合わせなどしていたら、いつまでたっても完成しない状況に置かれているでしょう
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LRS-Bの当初構想
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「本論1:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
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