23日、シンクタンクCSBAが精密誘導兵器PGMの将来と対処を考えるレポート「Sustaining America’s Precision Strike Advantage」の発表プレイベントを記者団に対して行い、中国など潜在的敵対国のPGMと対処防空網が発達し米軍に迫りつつある中、どのように対応すべきかについて提言しました
本番のレポート発表イベントは、24日にマケイン上院議員やフォーブス下院議員をゲストに迎えて大々的にやるようですが、事前会見の概要を米空軍協会web記事でご紹介します
なおCSBAの関連webページは
→http://csbaonline.org/publications/2015/06/sustaining-americas-precision-strike-advantage/
24日付米空軍協会web記事によれば
●レポート執筆者のMark GunzingerとBryan Clark両研究員は、PGMを搭載する母機に大きな注目が集まっているが、搭載兵器であるPGMへの関心が不十分だと語りかけた
●一方で潜在的敵対国である中国、ロシア、イラン、北朝鮮等は、米軍に追いつくため自身のPGMに大きな投資を行うと同時に、PGM対処にも力を入れている。対処機能には、電子戦、対衛星、サイバー兵器、地対空兵器、高性能デコイ、そして目標の防御強化(hardened/buried)等が含まれる
●その結果、現時点ではほぼ100%のPGMが目標到達可能と見積もられているが、将来は50%にまで低下し、所用の効果を得るためのPGM数が倍増する
●同時に、敵による防御エリアの拡大により、我のPGMはより大型・高価格になり、発射母機のソーティ数もより増加する事が予想される
●PGMの誘導精度の向上により必要弾数の減少が期待されるが、それではカバー出来ず将来は「精度プラス量」が求められるだろう
●射程距離あたりのコスト等でPGMを分析すると、「sweet spot」である射程100-400マイルのPGMがJASSMしかなく、これを安価に補うため、JDAMやJSOWやSDBのロケットモータ等を増強し、スタンドオフ性と母機の生存性を高める手段が有効ではないか
米軍も大量のデコイ等で敵に負担を強いるべき
●(中国等レベルの国との)将来の戦いが「大量のPGMの同時打ち合い:salvo exchange」であれば、その第1派は大量のデコイ(模擬ミサイル等)となるのではないか
●初動で大量デコイを投入し、ミサイルや航空機と誤解させて相手の防空網に射耗を強いることを考えるのだ。そして敵の反撃能力が弱まり、また防空弾薬再搭載に時間をとられている間に、第2派として高価なスタンドオフ兵器を投入して防空網を突破し、効率的に敵システムを破壊する
●中国、ロシア、イラン、北朝鮮等は、防御にも多額の投資を行い、より費用対効果の高い防御システム開発に取り組んでいる
●しかし残念ながら、米国はこの分野での歩みが遅い。もし防御も強化出来れば、相手にコストを課すことが出来るのにも関わらず、現時点では逆に米国がより攻撃コストを強いられている。この状態を逆転しなければ
●仮に2003年イラク戦争時のイラクの様な国が最新の防空網を備えたら、米軍は過去15年間に購入した以上のPGMを要するだろう。安価なデコイの大量投入が、この問題への唯一の対応策ではないか
新たな環境対応に新たな兵器を
●強固に防御された空域で敵を攻撃するには、新たな兵器が必要だ。より高い効果と1発あたりの効果向上が求められる
●新たな兵器には、超超音速ミサイル等のミサイル、多方向や意図しない方向から敵を攻撃可能な小型兵器を射出するデコイ、より大きな破壊力を持つ爆薬で弾頭を小型化して射程距離を伸ばしたミサイル等が含まれるだろう
●局所的にEMP効果を発揮する試験に成功したCHAMP(high-powered microwave missile)は、抗たん化された指揮所上空を飛行することで、内部の電子回路を焼き尽くす事が可能だ。これも国防省が真剣に取り組めば2年で実戦配備が可能だろう
●この様なアイディアが実験室にあるだけではダメだ。実用化のためのプログラムにしなければ。実用化出来たはずの装備を実現出来ず、現有の装備だけで戦いたいのか?
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CSBAの主要な研究者の皆さんに、是非、日本の防衛体制について聞いてみたいです。
先月のCSBA理事長来日講演の際、この種の質問が投げかけられたのか承知していませんが、本レポートや昨年末の台湾軍事態勢に関するレポートを見る限り、CSBAにとって現在の日本の防衛力整備は「奇妙きてれつ」に違いありません
「CSBA理事長に質問したいこと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16-2
と思ったら、CSBAサイトに理事長講演の模様がアップ
→http://csbaonline.org/2015/06/23/the-future-of-u-s-defense-strategy-and-the-japan-u-s-alliance/
最後の部分の「米軍は過去15年間に購入した以上のPGMを要するだろう」は、実戦を経験した米軍しか知り得ない「肌感覚」であり、大いに日本人も肌にすり込んで軍事感性を磨きたいものです
防御能力の向上は無視出来ません。米国防省の「中国の軍事力」報告書は、「中国はステルス機を探知出来ると主張している」と記述していますから・・・
「2015年米国防省:中国の軍事力レポート」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
最近のCSBAレポート
「次世代の制空を考える」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「米の潜水艦優位が危機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13
「即応体制評価を再検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-10
「ASB議論の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-15