4日、米会計検査院GAOがUCLASS(空母艦載無人偵察攻撃機)検討状況に関するレポートを発表し、当初の計画を大きく延伸して国防省内で行われている要求性能議論の状況を紹介しつつ、議論の結論によっては米海軍全体の資源配分の見直しを迫る恐れがあると、国防省及び米海軍に注意喚起しています。
元々、米海軍はUCLASSに関し、「A2AD突破まで期待しない程度のステルスでISRに期待」、「対テロ任務程度の軽攻撃能力」、「他機に空中給油可能」、「将来の能力向上が容易」等のレベルで要求値をまとめていました。
しかし国防関係議員や国防省高官や研究者等から、十分なステルス性、長距離航続能力、突破力が必要ではないかとの意見が噴出し、2014年夏に4企業グループに提示される予定だった提案要求書RFP発出が延期され、要求性能に関し再検討が行われているところです
6日付Defense-Tech記事によれば
●米会計監査院(GAO:Government Accountability Office)は、現在国防省内で行われているUCLASS要求性能検討について、結果によっては資源配分やコスト管理上の大きな懸念を生むとの報告書を発表した
●またGAO報告書は、国防省内の再検討によりUCLASS計画自体が当初より大幅に遅延することや、UCLASS検討に資する諸資源(resources:技術や知見?)が要求性能変更に役に立たなくなってなくなっていると指摘している
●完成時期に関しては、当初初飛行が2017年で運用開始を2020年と想定していたところ、現時点では初飛行が2020年、運用開始が2022年まで遅れているとGAOは報告している
●国防省内の検討は、国防省インテル担当次官やコスト&評価室を含めて行われているが、要求性能が決まらないと企業側への提案要求が出来ず、企業との契約は2017年までずれ込む見込みとなっている。
●空中給油機能を付与するかが大きな論点となっている。つまり、機体の燃料タンクをどの程度にするかによって機体の大きさ影響を受け、ステルス性や兵器搭載量に関係する。ISR重視の場合は、ステルス性や兵器搭載量は意識せず、航続距離を重視する
●突破力ある攻撃力を追求すれば、機体は小さく、燃料タンクの形状もレーダー反射を低減させる方向になる
●GAOは、攻撃重視に要求性能を変更するならば、コストや資源配分問題を生じると指摘している。
●そしてGAOは、要求性能を見直すならば、米海軍は再度、現状の技術、資源、知見についてよく確認した後、開発契約に望む必要があると要求している
●米海軍はGAOの指摘に対し、「米海軍は指摘に同意する。より高い要求性能を求められた場合、UCLASS開発スケジュールを、技術の成熟期間や要開発期間を踏まえて再検討する必要がある事に同意する」と回答している
GAOレポートのwebサイト
→http://www.gao.gov/products/GAO-15-374
//////////////////////////////////////////////////////
米海軍の「ISR重視」に反対し、「攻撃重視」を訴える国防関係議員や国防省高官や研究者には厳しいGAOの指摘ですが、だからこそ、統合レベルや国防省レベルで4軍の役割分担や資源配分を精査する必要があると思います
個々の装備の要求性能を議論するのではなく、「family of systems」で任務達成を考え、重複や「スキマ」を精査して、効率的な装備体系を実現する努力が不可欠です
このブログを始めたことは、UCLASS運用開始を米海軍トップが2018年とか語っていましたが、2022年にまで伸びています。あと10年は掛かると言うことでしょうか・・
UCLASS関連の記事
「空母無人機の空中給油試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-05
「空母艦載無人機UCLASSの選定延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1
「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12
「関連企業とRFP最終調整へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-19
「なぜUCLASSが給油任務を?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02-1
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSで空中戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24