指向性EMP兵器のCHAMPはどこへ？

CHAMPとは、米空軍研究所がボーイング社とともに開発した指向性のあるEMP兵器です。
EMP（電磁パルス：Electro-Magnetic plus）とは、一般に核爆発に付随して発生するモノで、電子回路の内部に強い電流を発生させて電子回路を破壊する原理は理解されていても、これを兵器として使用することは友軍に対する被害や紛争後の復旧を考えれば困難と考えられてきました。
CHAMP（Counter-electronics High-powered Microwave Advanced Missile Project）とは、この効果をより指向性を持って小規模に制御して発生させる装置の開発計画です。
4月29日下院軍事委員会で某議員が、2012年に試験に成功して開発完了しているCHAMPを、巡航ミサイルに搭載して使用すべきだと主張し、約10億円の経費を2016年度予算に含める動議を提出しました
動議は議論の段階で「却下」された様ですが、久々にCHAMPの話題ですのでご紹介します
4月29日付Defense-Techによれば
●共和党のRichard Nugent議員は、米空軍予算にCHAMPを巡航ミサイルに搭載させるための改修経費約10億円を含めるよう、予算案修正案を提案した
●修正案は採決に至らなかったが、Thornberry下院軍事委員長は「技術的可能性の問題で採用しなかっただけで、Nugent議員提案のアイディアには不同意でない」と語った
●Nugent議員は2015年度予算案にも同様の修正案を提案し、米空軍は18ヶ月あればCHAMPを、核兵器を取り外して倉庫に保管してある巡航ミサイルに搭載可能なはずだと主張していた
●米空軍はCHAMPを再利用（reusable）したいと考えており、回収可能なアセットに搭載してCHAMPを使用したいとの考えを示している
●Nugent議員は「米空軍は回収可能な手段を確保した後にCHAMPを使用すると言っているが、回収可能な手段の研究や開発に全く手を付けていない」と問題視している
●同議員は、前線の地域コマンド司令官はCHAMPのような機能の兵器を使用したいと要請しているのに、「このままでは、空軍の言う回収可能な搭載アセットが完成する頃には、CHAMPの有効性が失われてしまう」と訴えている
●まず巡航ミサイル搭載を可能にし、並行して回収可能な搭載アセットの準備を行うべきだと議員は主張している
2011年当時のCHAMPの状況
2011年9月末の「Defense Tech」は・・・
●9月22日、米空軍研究所とボーイングは、本年始めにユタ州の試験場で実施したCHAMP初の飛行試験成功を公表。CHAMPは、High-powered Microwave (HPM)を制御し、時間と場所を選択して特定の地域や目標に照射可能
●2009年４月から３年契約で進んでいる約30億円の統合要求に基づくデモ計画は、地上及び飛行間のデモを通じ、技術的リスクと軍事的有用性を確認するモノである。
2011年11月30日付米空軍web記事は・・・
●CHAMP計画の一環として、最近、指向性のデモフライト（Pointing Demonstration）が行われた。
●デモ飛行では、CHAMP母機の航法と指向性の正確性がデモされ、同時にHPM装置の引き金タイミングの正確性が示された。
●CHAMPは、現場指揮官からの要望に応え、作戦時の各種制約（被害の極限や復旧へ影響極限）を克服し、部隊を敵から遠ざけたままで特定地域を支配したいとの要求に応えるオプションの提供を目指すモノである
●空軍研究所は、複数目標複数射撃が可能なHPMシステムで敵電子システムの拒否、撹乱、破壊を目指している。
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技術的なことなので勝手に解釈してコメントできませんが、「回収可能なアセットに搭載」することで、敵に兵器の仕組みが暴露することを避けたいのではないかとも考えられます。
記事の読者コメント欄では、「米空軍にCHAMP搭載可能な無人機はないが、海軍のUCLASSやUCASなら可能そうだ。しかし空軍は海軍に頼りたくないのだろう」との書き込みが高い評価（読者相互評価）を受けています
米空軍の次期爆撃機LRS-Bに搭載の目があるのではとも思いますが、LRS-Bは要求性能などの細部が厳しく秘匿されているので、何も公言できないのかもしれません。
結構インパクトありそうな兵器なので、今後も注目です
2011年当時のCHAMP記事
「夢のようなCHAMP！？」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-08