22日、米空軍参謀総長のWelsh大将は講演で、米空軍は無人機の役割拡大を進めるが、「人間の頭脳はセンサーとして依然極めて重要なので」、見通しうる範囲の将来に置いては、戦闘飛行部隊の操縦席には操縦者が必要だろうとの主旨の発言をした模様です。
正確な表現ぶりは報道されていませんが、15日にメイバス海軍長官がF-35が最後の艦載戦闘機になるべきと発言した件に関する、米空軍制服組の反応と解釈されています
言葉尻を捉えて海軍と空軍の対立を「あおる」つもりはありませんが、一般的には、操縦者(又は操縦者OB)は有人機の重要性を訴え、文民や操縦者以外は無人機を推進する構図となっています
22日付Defense-Newsによれば
●米空軍は米海軍と異なり、見通しうる将来においては、大部分の戦闘飛行部隊の操縦席には操縦者が必要と考え、無人機で将来の攻撃飛行部隊を編制するつもりはないようだ。
●22日、米空軍参謀総長はワシントンDCでの講演で、米空軍は無人機への依存を増やす一方で、「人間の頭脳はセンサーとして依然極めて重要なので」戦闘機操縦者をなくすつもりは無いと語った
●空軍参謀総長の発言は、15日にメイバス海軍長官が「F-35Cは、恐らく確実に最後の有人艦載戦闘攻撃機になるだろうし、そうなるべきだ」、「特に自立・自動化された無人システムが、ますます増加する分野で主力となるべきだ」と発言したことをフォローしたものだ
●更に海軍長官は、上記発言内容を推進するため、N99という無人システム検討室を設置し次官補を配置するとも同日語っている
●空軍参謀総長は、長時間に及ぶ飛行や連続監視活動等、人体の限界を越えるような任務飛行には無人機への依存を増やす意向だと語った。実際この分野で米空軍は、U-2を引退させRQ-4グローバルホークの活用を増やす計画で、MQ-9を更に購入してU-28AやMC-12を減らしていく方向にもある。
●一方で、選択肢として有人タイプを考慮(optionally manned)するとされている次期爆撃機LRS-Bでさえも、最初は有人型でスタートする事になっている
●また、空軍参謀総長はF-35が最後の有人戦闘機になることは無いと語り、「空軍には多くの航空機が必要だが、当面の間は、有人機が最も効果的であろう」と説明した
●米空軍は2030年代の制空を検討するため「Next-Generation Air Dominance Program」を設け、空軍外の科学者や技術者、空軍研究所、国防省高等研究所、米空軍主要コマンド関係者で、必要な技術や工程表を作成する計画である
●また同参謀総長は、「第6世代の能力を求めているのである。制空は任務であり、プラットフォームではなく、任務達成の手段を検討するのだ」とも説明した
●2月4日に米海軍人トップのグリーナート作戦部長は、将来戦闘機を考えるにあたり「ステルス性が過剰評価されている」と発言し、将来戦闘機が有人機か否かは判らないが、物体が大気中を高速で進めば分子を乱して熱を発し、探知可能だとの主旨のコメントをしている。この発言から、海軍と空軍間の考え方の相違が指摘されてる
●なお海軍作戦部長の発言を受け、空軍戦闘コマンド司令官のカーライル大将は「空軍戦闘機にとってステルスは極めて重要だ。しかし他の能力との融合も考えねば。一つの属性を追求するのでは無く、複数の側面の能力を備えるべきである」と語っていた
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Defense-News記事は、海軍が無人機のみ追求のような表現になっていますが、米海軍司令部の航空担当少将は「空対空戦闘は有人航空機が遂行」とメイバス発言の後にコメントしており、様々な思惑や相互牽制が行われている状況です
ただ、申し上げておきたいのは、今や有用性が一般に認識されている無人機によるISRや対テロ作戦でさえも、ついこの間までは軍内に否定的な意見が多数あったと言う点です。
とかく軍事組織は「因習」や「前例」にとらわれる傾向が強く、変化への組織的抵抗が強い社会なのです
ロバート・ゲーツ語録より
(http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
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