「新システムだから問題はあると思っていたが、8割と聞いて唖然とさせられた」
14日、下院軍事委員会の小委員会でMike Turner委員長は、F-35教育や試験が行われているフロリダ州エグリン空軍基地で「ALIS」の実態を聞いたところ、ALISが発する警報の8割が誤警報で、整備作業に大きな支障をきたしていると現場整備員から訴えられたと語りました
ALIS(Autonomic Logistics Information System)は、これまでの戦闘機整備の概念を変革すると宣伝されている「自動整備情報システム」で、機体と接続するだけで故障箇所や対処方向を教えてくれ、要交換部品の手配まで指示してくれる世界規模のネットワークシステムのはずです
米国防省F-35計画室のBogdan室長も先月、プレスの報ずる多くの問題点は既に対処済みだが、ソフトとALISは懸念事項だと「本音」を語っていましたが、現場の声がその実態を示しています
米海軍省の高官もTurner議員発言を追認するようなコメントを発しており、海兵隊B型のIOCを今年後半、空軍用A型を2016年に控えたF-35ですが、今後ALISの完成度に注目が集まるでしょう
15日付Defense-News記事によれば
●Mike Turner下院議員(戦術航空小委員長:共和党オハイオ)は、先月エグリン空軍基地を訪れた際の整備員とのやりとりを下院軍事小委員会で紹介した。そして、F-35の兵站支援面で鳴り物入りで導入が進められているALISがトラブルで、同機の導入が更に遅れる可能性があると示唆した
●同議員は、同基地を訪れた同小委員会の複数のメンバーが整備員から聞いたところによれば、ALISが機体に問題ありと警報を発したケースの8割は誤警報だとの明らかにした
●更に同議員は、ALISのプログラムは整備作業を円滑にするどころか、作業を滞らせ整備を遅滞させていると小委員会で述べた
●「我々は誤警報がどれくらいあるかと尋ねた。新しい開発中のシステムだから問題はあるだろうと予想はしていたが、8割が誤警報と聞いて唖然とした」と率直に述べた
●Bogdan室長も、ALISはF-35開発の後を追いかけて始まったシステムで、中核の兵器システムとは異なり、結果としてALIS開発は根本的にF-35開発変化の影響を受けている、と語っている
●また、500万行に及ぶソフト開発についても、まだ長い道のりが残っていると認めている
米海軍省のStackley開発担当次官補は
●ALISは現場運用者の要求を満たしていない。誤警報の問題は正にその通りだ。ALISの信頼性、応答性、現場兵士への情報提供の適時性に関する問題は、最優先対処事項である
●1回の単純な対策で解決する問題ではなく、判明したソフトの欠陥修正には取り組んではいるが、すぐに出来るわけではない。改善されつつあるが、期待されている程度にはない
●ALISは現時点で500kg近くのラックに収まっており、大きすぎて空母や艦艇での試験が行えていない。7月に2名で持ち運び可能なサイズが完成する予定である
●現在のALISソフトはバージョン1.0.3だが、今年後半の海兵隊のIOCまでに2.0.1を完成させ、来年夏の空軍のIOCマデに2.0.2までアップグレードする計画である
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重箱の隅をつつくような「亡国のF-35」たたきは避けたいのですが、Bogdan室長も懸念しているALIS問題ですので取り上げました
コンピュータによる自動診断は結構なことですが、意味不明なアルゴリズムで「故障」と判断され、高い部品をその都度買わされたのではたまりません。
また、職人の感も重要な世界ですので、質の高い日本の整備員の職人芸が失われるのをみすみす見逃すのも忍びません。
本件に関するBogdan室長の説明を待ちたいと思います
「真に懸念しているのは・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-25