米政権がエジプトへの武器禁輸緩和

NSC.jpg3月31日、米国政府(正確には国家安全保障局NSC)が声明を発表し、2013年11月のクーデターでムバラク前大統領が政権を追われて以来凍結してきた米国からエジプトへの兵器輸出に関し、凍結を緩和すると明らかにしました
このオバマ政権の決定は、エジプトがイエメンの反体制シーア派への爆撃を開始した数日後のタイミングで発表されました。
米国はエジプトの民主的改革が進展することを「緩和」の条件としていたようですが、政策的判断があったようです
31日付Defense-Newsによれば
NSC2.jpg●米NSCのMeehan報道官は、2013年の禁輸以来、米国はエジプトの状況をフォローしており、「検討のプロセスは終了した。米国政府は議会で定められた範囲の柔軟性を適用し、エジプトに対する更なる軍事援助を行う」と声明で述べている
●更に同報道官は「(ただし)米国政府は民主化証明書を与えるわけではない」とも声明で述べている
●武器輸出緩和には、短期及び長期の意味合いがある。短期的には、米国が輸出を凍結していた12機のF-16、20発のハプーン対艦ミサイル、125両までのM1A1戦車の輸出が可能になる。
●またオバマ政権は、約1500億円のFMF(foreign military financing:軍事資金貸与)を行うと約束した模様
長期的には、オバマ政権はエジプトとの関係の「近代化」を望んでおり、2018年以降は、エジプトが米国製兵器の購入に充てる現行の資金提供の形態を止める意向を持っている
●そして2018年以降には、エジプトへのFMFは以下の4つのカテゴリーに目的を絞ることを米政権は考えている。4つとは、「対テロ」、「国境警備」、「海洋及びシナイ半島の治安維持」、「現有装備の維持」の4分野である。
Egypt military.jpg●声明では言及されていないが、米国はまた、エジプトの軍事戦略再検討を支援したい意向も持っているようである
●Meehan報道官は「エジプト国内のIS関連グループの勢力拡大など、21世紀の安全保障上の課題に対応するための、また米国の国益増進のため(新しい)2国間の軍事支援関係を構築する」と記している
下院軍事委員会の新委員長であるMac Thornberry議員(共和党:テキサス州)は、本決定を高く評価している
●同議員は「我々はエジプト政府が民主化プロセスを継続することを促す。同国は地域の重要な同盟国であり、両国の関係維持は米国にとっての優先事項である。エジプトに同国民や米国民を防御する手段を与えることは正しい判断である」と語った
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Egypt military2.jpg激動の中東情勢ですから、米国には「人権」だとか「民主主義」に余り拘らず、当面の安定を志向した政策の舵取りをお願いしたいのですが、その点この方向には賛同します
先日イスラエルの研究機関が、「従来の敵と味方の概念が通じない新たな危機の中で、イスラエルはアラブ諸国と柔軟に協力して行かねばならない」との検討会結果を発表した件をご紹介しましたが、米国にもそのくらいの柔軟性を発揮して頂きたいものです
テルアビブ大学による机上検討会
「対ISは強固でなく緩やかな連帯で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-08

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