米国防省2016年度予算案の方向は

「過去5年間の国防費削減を反転させるのが2016年度予算案だ」
2016-budget1.jpg2日、オバマ政権の2016年度予算案が公表され、国防予算について国防副長官と統合参謀副議長、更に予算担当次官等が会見や声明を発表しています。
当然ヘーゲル長官とデンプシー議長が会見を行うのが筋でしょうが、ヘーゲル長官は退任式を終えた身でもあるので、Bob Work副長官の出番となったのでしょうか・・・今の国防省の状況を暗示するかのような年度予算案会見です
予算案自体は「勇ましい案」となっています。強制削減関連の法律で示された上限($498 billion)より$36 billion多く、総額$585 billionとなっており、2015年度要求案よりも近代化予算が$21 billion増額されています。
なお$585 billionは、「$534 base budge」と「$51 billion war budget」から構成されており、2015年度予算から$25 billion又は4%の伸びとなっています
Work副長官は「戦略主導で、必要な資源を導く予算」と表現し、デンプシー議長は「過去5年間の国防費削減を反転させるのが2016年度予算案だ」と強気の姿勢を見せています
Bob Work副長官は会見で
2016-bud-graf2.jpg●2016年度の予算案作成は、「戦略主導で、必要な資源を導くプロセス」を踏んでできたものであり、「資源量を前提として、戦略を合わせる」ような本末転倒の議論から生まれたものではない
過去3年間の予算は、せいぜい生き残り可能なレベルで、発展できるものではなかった。しかし2016年度要求は、我々が達成すべき目的と手法と手段のバランスが取れた予算案だと強く信じている
●もちろん2016年度要求案でも、規模と能力と即応体制を健全なレベルで達成するのは容易ではないし、特に21世紀における技術的優位を維持する点に関して困難があることには変わりはないが
●背景にある戦略は「2014QDR」に沿ったもので、統合で国防に当たり、同盟国等との協力で対テロに取り組み、複数の正面で作戦を遂行するものである
統合参謀本部の首脳陣は
2016-bud-graf.jpgデンプシー議長は声明文で過去5年間の国防費削減を反転させるのが2016年度予算案だ」と表現し、「この予算案は、将来に備えながら、近未来のニーズとりクス管理の確実にすることを支えてくれるもの」と述べている
●また「わが軍の国際的な役割への関与を、能力・即応態勢・規模の点で最低限満たす軍を維持するレベルである」と記している
Winnefeld副議長は会見で、「この予算案は、予算を取り巻く3つの課題、減少する資源配分、国防省の柔軟性への制約、不確定不安定な将来資源を強く意識し、対応を考えた案である」と語った
●更に「どんな予算も完ぺきではないが、考えうるベストの規模・能力・即応態勢への投資配分を確保し、国益と安全保障を守ることができる予算案である」と表現した
●そして副議長は「余裕は全くない。この案からの如何なる減額も、基本となる戦略の見直しを迫ることになり、バランスを維持するための戦略再考を迫られる」と訴えた
●「もし案が認められなければ、米国の指導力と行動の自由を減殺し、選択肢を減らし、我々の大部分が好まない方向に向かうことになろう」と主張した
Mike McCord予算担当次官(Comptroller)は
2016-budget2.jpg●(1月29日の事前インタビューで、)国防省は議会に対し、10年間行われていない基地の再編閉鎖を要望する。「我々には明白に過剰な基地容量が存在し、何とかしなければならない。基地の構成を再検討すべきタイミングである」
A-10攻撃機の全廃、米陸軍航空部隊の再編、米海軍巡洋艦の段階的近代化の計画も含まれている
●しかし2013年から行われた強制削減の痛手は大きく、本予算案が認められたとしても、陸軍と海兵隊は即応態勢回復に2020年までかかり、米海軍も同様である
●ただし米空軍は、世界的な空輸や任務を抱えており、2023年まで回復は難しい
主要な予算項目
●57 Joint Strike Fighters, for $10.6 billion;
●16 Navy P-8 aircraft, for $3.4 billion; and
●5 E-2D aircraft for $1.3 billion. The budget puts
●$3 billion into KC-46空中給油機
●$1.2 billionを次期爆撃機LRS-B
●$821 millionを無人機MQ-9
●2隻のVirginia-class submarines,
●2隻のDDG-51駆逐艦
●3隻のLCS沿岸戦闘艦
●$678 millionで空母George Washingtonの定期修理
陸軍のヘリ近代化に$4.5 billion
軍種別では
Army receives $126.5 billion
Navy $161 billion
Air Force $152.9 billion
defense-wide $94 billion.
米国防省web予算案特設ページ
→http://www.defense.gov/home/features/2015/0215_budget/ 
国防省予算案の説明スライド(1.8MB)
→http://www.defense.gov/pubs/FY16_Budget_Request_Rollout_Final_2-2-15.pdf
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細部については、今後徐々に判明するのでしょう。4日の朝刊報道と合わせてご確認ください
空母George Washingtonの修理費要求は、空母11隻体制を維持するとの発表と同値です
Kendall III.jpgちょっと気になっているのは、1月28日にケンドール次官が下院軍事委員会で予言していた「aerospace innovation initiative」で、DARPAが主導し、海空軍が協力するという、制空を確保する次世代航空機を速やかにもたらす計画です

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