6日付Defense-Newsは、ドイツ内閣がドイツ連邦軍の雇用条件改善して魅力化を図る法案を承認したと報じています。
同法案は、ドイツのUrsula von der Leyen国防相(女性)によれば、若者や専門能力のある人材をドイツ軍に引きつけ引き留める事を狙いとした物だそうです。
欧州で安全保障上の脅威が不明確になり、軍事予算の削減が続いてきた事で、軍の社会における認知度や軍人の職業としての魅力が失われてきたのでは、との危機感から生まれた施策と考えられます。
特に最近のウクライナ情勢や中東におけるISISの勢力拡大が、ドイツの危機感を生んだようです
6日付Defense-Newsによれば
●Leyen国防相が提出したドイツ連邦軍の総合的なイメージ改善案は、最近の国防支出の削減や今年に入って連続している軍装備品に関するマイナスの報道からの挽回を狙った物である
●同法案を紹介する記者会見で国防相は「良い人材は良い装備品と同様に重要である」と法案の主旨を説明している
●法案には例えば、史上初めて基本給の2割に当たるボーナスを今後4年間支給することや、専門能力を有する航空機整備員に月額440ユーロの手当を支給すること等も含まれている
●Leyen国防相は、ボーナス等の施策により、IT分野など、軍隊が求めている高いスキルを持つ専門家を引きつけたいと語った
●また給与面では、特に危険を伴ったり困難な職務に従事する場合に給与を4割まで増額する改善案も含まれ、これにより軍人2万2千人、文民職員5百名が恩恵を受ける
●勤務形態での改善では、ドイツ軍史上初めて、通常勤務兵士の週間の勤務時間を41時間に定める(制限する?)規定が盛り込まれ、更に、短時間就労形態を制限する規則を撤廃することも含まれている
●この改正により、現状では18歳以下の子供がいるか、ケアの必要な家族がいる勤務者にのみ認められていたパートタイム勤務(短時間勤務)が認められる
安全保障政策も明確にしたい
●同国防相は同時に、2006年に発表以来途絶えている国防白書の編さんと出版を求めており、白書の中でドイツが直面している安全保障の課題や国防の優先事項を示したいと考えている
●新白書ではまた、今年年初のミュンヘン安全保障会議以降に議論が始まったドイツの国際政治や国際社会における役割についても明らかにし、ウクライナ危機や「イスラム国」の脅威にドイツとしてどう対処するかについても明示したいと独国防相は語っている
●ドイツの軍支援団体の委員長は、この施策は国防省と兵士の信頼を築く上で欠く事が出来ない物だと評価し、「兵士は喜んでいる。志願兵制度を維持する上でも重要なステップである」と語った
●法案はまだ閣議了解段階で、議会の承認を得る必要があるが、2015年4月には可決され効力を発揮する見込みだ
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
欧州の雰囲気がどうなのか、正直なところ判りませんが、一端平和に慣れた、つまり危機感が薄れた国民に安全保障の問題を語るほど難しいことはありません。日本の心ある皆様は、身にしみて感じておられるでしょう。
でも、欧州ではまだまだメディアが「軍事常識」や「安全保障感覚」を備えていることから、「復元力」が有るのかもしれません。
欧州で唯一経済余力があるドイツだから出来る施策で、他の欧州諸国では不可能な施策だと思いますが。