10月28日、シンガポール国防省が巨大なヘリウム気球「Aerostatシステム」で同国周辺空域と海上の監視任務を行うと発表しました。
米国のTCOM社製のヘリウム気球で、運用開始時期は明確に発表されず「will be deployed」となっていますが、小さな国の監視任務を効率的に行うための手段のようです
29日付Defense-Newsによれば
●10月28日、シンガポール国防省は「空域及び海上安全保障のため、1機の巨大な監視用ヘリウムバルーンを設置する」とwebサイト上で発表した
●ヘリウムバルーン「Aerostat」に搭載されたレーダーは、半径約125nm(200km)の範囲を監視可能で、マレーシアからマラッカ海峡上空を飛行して進行する航空機や、インドネシアから接近する小型船舶までを追尾できる
●全長約55mの「Aerostat」は地上からワイヤーで係留され、高度600m上空から24時間365日の監視を行う。運用には8名の人員が担当する
●同国のNg Eng Hen国防相は本プロジェクトの経費を明確に語らなかったが、「航空機を用いた常続的な監視と比較し、年間で約23億円の運用コスト削減になる」と語り、「小さな国であるシンガポールに、作戦対応の余裕時間を与えてくれる」と評価している
●シンガポールは好調な経済成長もあり、東南アジア諸国の中で最大の国防予算を支出している
シンガポール国防省webサイトは
●これまでもシンガポールは、空と海の監視に強固な監視システムを配備してきた。しかし、従来のシステムは高層ビルの建築ラッシュで「見通し:clear line of sight」確保が困難になりつつある
●その点、上空に配備される「Aerostat」はクリアーな見通し線を確保でき、空と海の監視を全周囲で可能で、脅威の早期探知と対処を容易にする
●気球を監視や通信中継に用いる取り組みは、1980年代から世界中の多様な機関によって試みられてきた。この間の研究により、気球の信頼性と安全性が格段に向上し、運用手順も確立されてきた
●現在では、米国の税関や国境監視防御庁が同種の気球をそれぞれの任務のため活用している
●シンガポール国防省は、混雑するシンガポール周辺の航空交通との吻合を図るため、シンガポール民間航空局と連携して安全確保に努め、また雷被害を防止策も関係省庁の基準を満たすことで達成している
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常続的な低空域の監視に活用できそうです。有事にはあっという間にやられそうですが・・・
「航空機を用いた常続的な監視と比較し、年間で約23億円の運用コスト削減になる」とありますが、削減幅が小さいように思います。「運用コスト」だけでの比較のような気がします。
維持整備費や関連人件費等を含めれば、更に機体購入費までを含めて比較すれば、シンガポールが保有する早期警戒機や早期警戒管制機よりも、遙かにお得な装備のような気がします・・。平時の監視ならば
シンガポールの話題
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