在日米軍基地は脆弱だから豪州にも拠点を

Asia Pacific.jpg15日付岡崎研究所評論集はCNAS研究者の論考(9月3日付WSJ紙)を紹介しつつ、在日米海軍基地の脆弱性を考えれば、CNAS研究者が提案する豪州西海岸に米空母打撃軍の拠点整備案は素晴らしい案だと評価しています
これまで日本の研究者や研究機関は、政府や防衛省の顔色を伺ってか、はたまた日米同盟の根幹に触れたくないからか中国軍のミサイル攻撃に対する在日米軍基地の脆弱性とその代替案について正面から言及することは、ほとんどありませんでした
その点、この岡崎研究所の論考はフィリピンの米軍展開基盤さえ脆弱だと「冷徹」に評価し、豪西海岸パースを米空母打撃群の前方展開拠点にする案に賛同しており、その現実を直視する姿勢に「時の流れ」をしみじみと感じる次第です
まずCNAS研究者の論考(9月3日付WSJ紙)
CroninPatrick.jpgクローニンとフォンテーンは、米豪同盟を深化のため、豪州西部のパースを第二の米空母打撃群の前方展開拠点としてはどうかと提案
●アボット豪政権は米豪同盟の深化に努力しており、米国も足並みを揃え、国家として内向きになりつつある中でも、インド太平洋における米国のプレゼンスを拡大機会を生かすべきだ
●米海軍は日本を第7艦隊の母港としているが、地域に2つ目の空母打撃群が必要となった場合、米西海岸から派遣する以外に方法がなく、現地到着まで日数を要する
●パースに空母と艦載機部隊、他の護衛艦船を配備できれば、米国のシーパワーを3倍((2012年の議会報告による)に増強することになるという。
Abbott.jpg●既に豪州北部では、米海兵隊・空軍のローテーション展開の拡大が行われており、2020年までに最大2500名の米海兵隊員が豪州で訓練を行うことになっている。
●また、米豪はサイバーセキュリティや宇宙、対潜水艦戦(ASW)、特殊作戦、地域安全保障といった分野での協力を、更に緊密化すべき
●更に米国は、豪州が進めるココス島の開発を、情報収集を行う無人機の拠点として整備する支援も可能
米海軍のプレゼンスを豪州西部に展開することは、世界で最も成功している二国間同盟を、効果的かつ余裕のある形で拡大させることになろう
CNAS研究者論考への岡崎研究所コメント
okazakiH.jpgこの提案は、現在の米豪同盟の進展状況と将来的な戦略環境の変化を踏まえれば、有効かつ現実味のあるもの。
●現在、米空母打撃群の前方展開拠点は横須賀のみで、それ以外の母港はすべて米本土にある点をかんがえれば、「基本的には」歓迎すべき
●横須賀は、冷戦期から継続して米軍にとっての戦略的要衝である。しかし今や、中国の弾道・巡航ミサイルや海空戦力によるA2AD能力の増強により、沖縄はもとより、横須賀の脆弱性も徐々に高まりつつある。
●もちろん、それを理由に横須賀から撤退すれば、日米同盟の信頼性に関わるので、米海軍の横須賀におけるプレゼンスは、維持することが重要だがパースへの配備は横須賀の脆弱性を補完する意味がある
ASBM DF-21D.jpg●戦力分散の観点から、フィリピン海軍基地の再活用も進められているが、人道支援・災害救助(HA/DR)の拠点としては有用だが、対中有事には第一列島線に近すぎ、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの射程圏内にあるため、脆弱性に変わりはない。
●その点、豪州西部は中国のA2AD圏外にあり脆弱性が低く、平時のプレゼンスの他、東南アジア・インド洋正面への展開には申し分ない位置にある
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「基本的には歓迎すべき」との表現は岡崎研究所らしく、在日米軍の日本離れを強く警戒しています。
再度申し上げますが、豪州西部パースへの米空母機動部隊の展開はともかく、「中国の弾道・巡航ミサイルや海空戦力によるA2AD能力の増強」を真摯に受け止め、沖縄や日本の軍事施設の脆弱性を加味して議論を行う姿勢を高く評価します
このような現実に即した視点に立てば、戦闘機だけ国防投資や陸上自衛隊の規模維持などが如何に不合理か、自ずと明らかになるでしょう。
岡崎研究所関連の記事
「脆弱も米軍は前方展開を維持せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-12
「陸軍ミサイル部隊化を擁護!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-09-1
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「戦闘機命派の包囲網強化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-17

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