「(F-35等の5世代戦闘機が備えるステルス性の欠点を考えると)ステルス技術は危うい。電子戦攻撃機EA-18Gのみが完全な防御を提供できる」
18日付WSJ紙は、FA-18やF-15の生産が間もなく終了するボーイング社が、戦闘機製造に依存しない態勢への移行に備え始めていると報じています。
F-22ではロッキードと共同生産になったものの、JSF受注競争でロッキードのF-35に破れ、空母艦載無人機デモ機でもマクダネル・ダグラスのX-47に敗れたボーイングは、無人機や爆撃機や練習機に軸足を移す方向とか・・・
しかし冒頭のボーイング幹部の言葉が示すように、極めて危うく滅びゆく根拠なき米軍の戦闘機重視方針に対し、ボーイングの技術者は不満いっぱいな様です。
19日付DODBuzzはWSJ紙を引用しつつ
●ボーイング社は、戦闘機を製造しない時代への備えを始めている。
●米国内のみならず世界での軍用機需要が落ち込む中、ボーイング社はFA-18の製造を2017年に終了し、F-15も2019年が最後になる。
●ボーイング軍事宇宙部門のChris Chadwick社長は、今年の10月から、戦闘機に変わって無人機や爆撃機や練習機に軸足を移す戦略を開始すると語り、「現実に向き合う必要がある」と述べた
●同社は現在も、「イスラム国」攻撃に活躍しているFA-18E/Fへの予算配分を確保すべく議会に働きかけているところだが、将来に向けた転換を開始する
●今年の米海軍協会総会でボーイング社は、F-35よりも同社製のEA-18G電子戦攻撃機のほうが、A2ADとの言葉で表現される洗練され強固な敵の防空網内での作戦には効果的だと主張してした。
●Mike Gibbons副社長は「(F-35等の5世代戦闘機が備えるステルス性の欠点を考えると)ステルス技術は危うい。電子戦攻撃機EA-18Gのみが完全な防御を提供できる」と明確に訴えていた
●ボーイング社は、米軍全体の所要を見積もると、現在の100機体制に加え、更に50~100機のEA-18Gが必要だと主張し、2015年度予算にも22機を盛り込むべきだと訴えている。
●一方で米軍は、EA-18Gを予算案に盛り込まず、逆に欧州を中心としたF-15Cを51機削減する計画を提出している。下院は12機のEA-18Gを盛り込むよう動いているが、上院で認められる見通しは立っていない
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ボーイングにとっては厳しい変化の時ですが、泥舟F-35にすがっているロッキードより、無人機や爆撃機や練習機に軸足を移すほうが「健全」かもしれません。近い将来には明らかになるでしょう
米海軍トップは「ステルス機は間違いなく今後10年間は有効だろう。しかしそれ以降考えると、私は電磁波を制圧する航空機とコンビを組む必要があろうと思う」と明言しています。
UHF周波数帯レーダーの発達と戦闘機クラスのステルス機の限界は「物理の法則」から来るものであり、日本も謙虚に向き合うべきです。
全く別の話ですが、国防省や軍が要求していない装備への予算を、議会の判断で押し込む仕組みに驚かされます。
ステルスと電子戦を考える記事
「ステルス機VS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12