米海軍と海兵隊が、敵の誘導ミサイルの発達によりますます困難になりつつある着上陸作戦(expeditionary warfare)を支える着上陸輸送力(LCUやLCACを指す:connectors)の将来像について、議論を始めているようです。
米海軍の担当少将へのインタビューを元に軍事メディアが報ずる検討具合は、「脅威の変化」に則したモノとは言い切れず、「生煮え」感一杯ですが、本日は当面の施策としての「新LCAC」導入と海軍海兵隊合同の「connectors」検討委員会の様子についてご紹介します
「新LCAC」導入
●米海軍と海兵隊は、現在32隻のLCU(Landing Craft Utility vessel)と72隻のLCAC(Landing Craft Air Cushions)を、輸送船から着上陸地点に人員や物資を輸送する「connectors」として使用している
●LCUは平均艦年齢が43歳と老朽化が進んでいるが、125トンを搭載でき、1200nmを10日間で進むことが出来る
●新しいLCACはホバークラフト型の「connectors」で、1986年から建造が始まり、60トン搭載でき36ノットで200nm進出可能である
●最近海軍は8隻の新型LCACを発注した。新しいLCACはSSC(Ship-to-Shore Connectors)と呼ばれる。初号機が2017年5月に納入され、2020年までに6隻が軍に引き渡される計画である。
●新型LCACは、エンジン出力が増して搭載量が75トンにアップし、デジタル化が進んだ。現価格は約60億円だが、海軍は追加購入の場合には45億円まで価格低下を図りたい意向
●LCACは災害対処も考慮して設計されており、インフラが破壊された沿岸地域へ直接乗り入れ、人員や物資を輸送出来る能力が評価されている
●現有のLCAC全てを新型に換装するか不透明だが、海軍は現有LCACの最低10年の延命措置計画も進めている。
LCUについては???
●現有32隻のLCUについても、海軍は更新を考えている。最近後継艦に関する分析を終了し、任務や要求性能を固めて建造に進む予定。2018年に初号艦の契約し、2022年に運用開始の計画
●新LCUは「Surface Connector XR or SCXR」と呼ばれているが、基本的には現有LCUと設計思想は同じ。搭載量が現125トンから170トンに増加するが、原設計が気に入っており、大きくは変えない
将来に向け「connector next」検討委員会
●A2AD脅威を代表する巡航ミサイルや長距離対艦ミサイルのような脅威の拡散や高度化に直面し、空母や着上陸部隊が海岸線に接近することが困難で危険に成りつつある中、海軍や海兵隊はどのように作戦すべきかが問われている
●次世代のconnector:通称「connector next」を検討する海軍・海兵隊合同委員会(Navy-Marine Corps Connector Council)が3ヶ月前に設置され、両軍の関係者が多方面から参加してLCACとLCUの将来像を戦略や技術面から議論している
●米海軍水上戦闘センターとも協力して「戦略」や「作戦コンセプト」の素案作りが行われており、9月に予定されている次回の合同委員会に各参加者の素案に対する意見を持ち寄る事になっている
●例えば沿岸から遠い地点からの作戦開始が求められる。従って「connector」はより長距離の輸送を期待されるだろう。
●また我の上陸兵力を分散することで敵の脅威を弱めることも出来るだろう。また海岸線近くで水中に潜ることも考えるべきかもしれな。
●一方で、最新のISR技術を活用し、敵が手薄な、又は不在な上陸地点を的確に把握することが可能になるかもしれない。ISRの分野は、硫黄島戦当時よりも格段に技術が進歩している。
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まだまだ、過去の戦い方や過去の栄光に捕らわれ、脅威の変化を直視できていないような気がしますが、検討を開始しているだけでも良しとしましょうか。
一方我が国では、過去の着上陸作戦の概念をそのまま持ち込み、脅威の変化も考えず、組織防衛を図ろうとする陸上自衛隊が幅を利かせています。残念なことです