巨大軍需産業LM社の課題あれこれ

Marillyn Hewson3.jpg3日付Defense-News記事が、就任1年半のLockheed Martin社CEOであるMarillyn Hewson女史へのインタビュー記事を掲載しています。
同記事は冒頭で、同CEOのこれまでの業績を社内組織の改編と民生品ポートフォリオ拡大と挙げ、今後の課題を顧客との関係改善、海外マーケット拡大、F-35計画の遂行、次期爆撃機の機種選定勝利等と紹介しています
このインタビュー記事が興味深いのは、現代の巨大軍需産業が直面する課題を反映したその質問内容に在ります。回答部分は「極めて教科書的」ですので簡単にご紹介し、質問をメインでご紹介したいと思います
3日付Defense-Newsのインタビュー記事は
質問1 巨大軍需産業の時代は終焉に向かっている見る人がいる。非伝統的な企業であるアマゾンやGoogle等が政府事業に参入し、伝統的な軍需産業が民生技術を元に軽攻撃機市場に新規参入を果たしている。また、Space-Xは貴社の領域を侵す勢いを見せている。新しい時代が来たのか?
回答1 弊社は広範な分野で高度な技術を保有する企業である。宇宙や航空からミサイルや兵器管制装置まで、また更にITソリューションにも至る広いエリアをカバーしている。この広範な分野での蓄積が、顧客にトータルな課題への回答を提供できる素地である。
競争は歓迎する。時に競争は我に試練を与えるが、顧客が弊社に求める革新技術を提供するため投資を継続する
Marillyn Hewson2.jpg質問2 貴社のような巨大企業は、新興企業より官僚的で敏捷性に欠けると見られている。何らかの変革策を打っているか?
回答2 弊社はイノベーションの文化を保ち続けている。多くの先進研究室を保持し、如何に最高の仕事が出来る環境を提供するかを考え続けている。弊社に来る人材は、最新の技術を生かして新たな価値を生み出すことを望んで集まっていくる。
質問3 あなたが貴社の株価上昇ばかりを気にし、研究開発への投資をおろそかにしているとの批判があるが、どう考えるか
回答3 弊社はバランスの取れた資金投資戦略を持っている。その通り、長期にわたり株主への還元にコミットしてきたが、毎年どうあるべきかを検討しての結果だ。一方で研究開発や成長への投資も続けている。3年連続で研究開発投資を増額してきた。大学や研究機関との共同事業も進めてきた。M&Aも続けていくつもりだ
質問4 レイセオン社は貴社や他社を打ち破り、海軍の2つの重要な契約を勝ち取った。イージス艦レーダーと機上電子戦システムである。この敗北は貴社の研究開発アプローチに変化を与えるか?
回答4 弊社は継続して研究開発に投資を続けており、急激に何かが変わるわけではない。過去3年間、我々の研究開発投資は増加を続けており、昨年は13%、今年は5%増である
回答4-1 超超音速技術は良い例である。弊社はこの技術に何年も投資を続けてきた。ナノテクノロジーにも7年近く投資を続けている。新エネルギー投資も続けており、海洋エネルギー発電や波力発電、その送電技術にも投資を行っている
質問5 あなたは米国防省と貴社との「こじれた関係」を改善したと評価されている。関係改善に何を行ったのか?
回答5 顧客が中心にあるべきとの原則に則り、顧客の要望や声に耳を傾け、何が出来るかを考えた。最も重要なのは、オープンで透明性の高い意思疎通である
Marillyn Hewson.jpg質問6 予算の強制削減への対応戦略は?
回答6 懸念しており、その懸念を伝えるため、頻繁に議会に赴いている。なんとしても一律カットのような無策は変更されるべきである。一方で企業は環境に適応しなければならない。いかに成長するかを考えている。海外でのビジネス成長に取り組んでいる。今は海外が18%だが、今後数年で2割超を目指す
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復習すると質問のポイントは
「巨大軍需産業の時代は終焉に向かっている」
「新興企業より官僚的で敏捷性に欠ける
株価上昇ばかりを気にし、研究開発への投資をおろそかに」
「レイセオン社は貴社や他社を打ち破り
「予算の強制削減への対応」
巨大組織が巨大な力で史上最大の兵器事業「亡国のF-35」のような仕事を請け負うと、その反作用で大組織病に蝕まれるのかもしれません。
Marillyn Hewson女史へのインタビュー(1年前)
「就任時:豪腕女社長が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-16

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