5日に米国を発ったヘーゲル国防長官は、イラク北部への空爆が開始(8日)された中ですが、ドイツ、インド、豪州を歴訪しています。ちょうどイラク空爆が開始された時刻には、ドイツに続く2番目の訪問国であるインドで要人との会談をこなしていました。
本日はヘーゲル長官海外歴訪の中から、アジア太平洋戦略を考える上で気になるインド訪問について取り上げます。インドにModi首相の新政権が誕生し、前週にケリー国務長官もインドを訪問したばかりのタイミングです。
結論から述べると、2012年に協力取組枠組みを構築したものの、依然としてあまり進展なしです。色々な共同開発の案がある中で、「対戦車ミサイル」等をヘーゲル長官は進めたかったようですが、足踏み状態の模様です。
訪問の概要を9日付Defense-Newsは
●7日にインドに到着したヘーゲル長官は、8日、インドのAjit Doval国家安全保障補佐官、 Arun Jaitley国防相、Sushma Swaraj外相、Narendra Modi首相と会談した。
●会談後のプレスリリースで、「国防装備品の共同開発と共同生産を念頭に、2012年締結の国防協力枠組み(Defense Technology and Trade Initiative:DTTIを前進させることで合意した」と発表された。
●国防協力枠組み(DTTI)のインド側窓口は国防生産長官であり、米国側はFrank Kendall国防次官(調達技術取得担当)が担当する
●2012年に締結された両国の協力を促進し障害を削減するDTTIであるが、これまでのところ、具体的なプロジェクトは成立にはつながっていない。
●米印国防関係の専門家であるNitin Mehta氏は、インド側の米国との共同開発&生産への取り組みは、ロシアやイスラエルとのそれと比較し鈍重である。
●また同氏は「インドへの技術移転に対する、米国側の熱意(不足)が、両国関係の飛躍的発展を妨げている」と背景を分析している
企業家や研究者への講演(9日)
(米国防省web記事より)
●基本的にインドと米国の関係は強固である。問題は、2国間協力が持つ膨大な潜在力を生かすことが出来るかにある。可能性を結果に結び付けられるかにあるのだ
●両国が持つ科学技術や発想改革力の優位性を生かし、両国の国防分野での協力を変革していけるかに掛かっているが、昨日の一連の会談を通じ、私は協力推進の自信を深めることが出来た
●両国にある官僚主義的なしがらみが協力を妨げてはならない。特に軍需産業間の協力において障害になってはならない
●過去6年間に1兆円以上の国防関連取引が成立しているが、まだまだ進展の余地がある。単に買ったり売ったりするのではなく、共同開発であり、共同生産であり、技術移管に向かうべきである
●協力の具体的提案が不足しているのではない。機会をものにする両サイドのチャレンジが必要なのだ。例えばその一つに対戦車ミサイル計画があるが、これはインドに対してのみオファーしているのだ。
●両国間には同意できない分野もある。どんなに親密な関係においてもそれはありうることだ。
●しかしインドは東方に関心を示し、米国はアジア太平洋バランスに取り組んでいる。インドと米国の利害は、インド洋から太平洋に至る地域で、これまでになく緊密につながりつつあるのだ。
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共同開発でイスラエルやロシアとの関係のほうが進んでいる・・・との状況のようです。中国が米国から盗んだ技術でインドと関係を深めていなければ、良しと致しましょう
米国としてはもっと早急に進めたいのでしょうが、ここはじっくり粘っていただきましょう。じっくりと粘り越しに期待しましょう。
米印軍事関係の過去記事
「米印関係ランクアップ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1
「米軍がインド対応特別チームを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16
「2012年6月の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-06
「米印軍事関係の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-27
「印空軍がC-130で世界記録」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-31-1
「12年7月に6機追加決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-24
ヘーゲル長官3カ国歴訪特設webページ
→http://www.defense.gov/home/features/2014/0814_hagel1/