4日付Defense-Newsが、7月23日に中国が実施した「ミサイル防衛テスト」に対する様々な専門家による評価を紹介しています。対衛星兵器(ASAT)かもしれないし、ABM(anti-ballistic missile)能力獲得を目指すモノかもしれない等の見方があるようです
またインドとの関係を考察し、仮にABMシステムならば中国にとってマイナスではないか・・等の視点も紹介しています。ASATに関しては、中国は「ハードキル」ではなく、「ソフトキル」を目指すとの見方をご紹介したこともありますが、いずれにしても「謎」が多い分野ですので、いろいろな見方を提示しておきます
4日付Defense-News記事によれば
●米国務省と軍事専門家は、7月23日に中国が実施した「ミサイル防衛テスト」を、ASAT試験と評価している。
●今回でこれで3回目となる物理的破壊テストについて、「Project 2049」研究所のMark Stokes氏は、「最近の試験は中国上空の宇宙使用を妨害する中国軍の野望を示すもの」と分析している。
●中国は過去、2007年と2010年にDF-21弾道ミサイルの改良型のSC-19をASATに用いてきた。2007年は老朽気象衛星を実際に破壊し、宇宙にゴミをまき散らして国際的な非難を浴びた。
●しかし2010年と今回の試験では、2007年の教訓を反映してか、弾道ミサイルを目標にして試験を行っている
●7月の試験がSC-19か別の迎撃ミサイルかの判定は、現時点で時期尚早である。しかしStokes氏は「衛星攻撃用HQ-26の推進装置を試験した可能性もある」とし、「昨年初めから開発が始まったと言われる、新型固体装置が関連しているかもしれない」と見ている
別の専門家2名の視点
●中国軍事専門家のRichard Fisher氏(International Assessment and Strategy Center)は、批判を浴びた2007年の試験以来、低高度の弾道ミサイル対処兵器と見せかける動きを中国は行っているとコメントしている
●またFisher氏は「SC-19がASATとABMの両方の能力を保有している可能性もある」とも述べている
●Fisher氏は、中国の新しい迎撃ミサイルHQ-19やHQ-26が、米国の高高度BMDシステムTHAADに似た能力を保有すると分析している。
●また別の報道では、中国がロシア製のS-400システム導入を試みていると伝えられている
●上記のような見方に反対の専門家もいる。米国科学者協会の核関連部長であるHans Kristensen氏は「米国とロシアが長期間と資金を掛けても未完成なABMに、中国が簡単に成功するとは考えにくい。特に高性能な米露の高性能多弾頭ICBMに対応できるとは考えにくい」と見ている
●また中国が米国による太平洋地域でのミサイル防衛整備に反対し続けている点からも、中国のABM開発は可能性が低いとしている
●更にKristensen氏は、中国がABMを保有することで、インドがその小規模核戦力を抑止力強化のため多弾頭化すれば、中国の安全保障が逆に損なわれることにもあり得ると指摘している
●同氏は、中国が自身のABMシステムを開発しようとしているのか、敵のシステムを理解して克服しようとしようとしているのか、興味深い疑問であると述べている
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今年1月の下院軍事小委員会では別の見方も
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-30-1
●中国は軍事的にも商業活動面でも、米国ほど宇宙アセットに依存していない
●中国が投資していると推測される「宇宙エネルギー兵器」等の兵器については、その効果についてほとんど判明していない
●中国が2007年に衛星攻撃兵器の実験を行って以降、中国も宇宙ゴミにより自らのアセットが危険にさらされることを認識したのか、直接攻撃手法から「soft kill」や「vision kill」に向かいつつある。
●中国は「ジャミング」に膨大な投資を行っている
●中国は宇宙での軍事について、米国とは大きく異なる見方をしている。その見方は冷戦時代のソ連とも異なる
上記の証言者は以下の3名
Michael Krepon(スティムソンセンター)
Ashley Tellis(カーネギー財団)
Robert Butterworth(Aries Analytics Inc理事長)
「よく分かっていない」ことが理解できたような気がします・・・