E-2D早期警戒機はステルス機が見える!?

E-2D2.jpg9日付米海軍協会web記事が、今年中にも実運用に入るE-2D早期警戒機の高性能レーダーが、恐らく戦闘機クラスのステルス機を探知して攻撃兵器を誘導できるのではと報じています
同記事は米海軍の作戦構想を熱心にフォローしているDave Majumdar記者によるもので、E-2D新型レーダーの技術的進歩と、明らかになりつつあるE-2Dを中核とする米海軍作戦構想から判断し、E-2Dのステルス機探知能力が、かなりの確度で「5世代機対処の秘密兵器」だと分析しています。
米海軍トップが「ステルス技術だけでは10年後は戦えない」と発言(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22)して米空軍を牽制しているように、F-35命の空軍とF-35との関わりを最小限にしたい海軍との「ドロドロ」が背景にはありますが、技術動向としても興味深いのでご紹介します。専門知識のある方のコメントを歓迎いたします
9日付米海軍協会web記事
E-2D1.jpg●恐らくノースロップ・グラマンE-2Dは、ステルス性を持つ5世代戦闘機や巡航ミサイル脅威に対する米海軍の秘密兵器になるであろう。
●鍵となるのはLockheed Martin社がE-2D用に開発したAPY-9レーダーで、UHF周波数帯(300MHz – 1 or 3GHz)を使用する世界初のアクティブ・フェイズド・アレイレーダー(AESA)である。
●中国やロシア製を含む戦闘機サイズのステルス機は、戦闘機搭載レーダーや地上配備の捜索レーダー周波数であるKa, Ku, X, CやSバンド周波数に対するステルス性を最適化している。
●これらの周波数より波長が長い(0.1~1m)UHFやVHF帯レーダーは、理論的に戦闘機サイズのステルス機を探知できる。
●一方で、より波長の長いUHFやVHF帯レーダーは分解能が悪く、正確な位置把握や迎撃ミサイルを誘導する精度が得られなかった
●しかしE-2CのAPS-145レーダーが機械式走査1chのみであったのに対し、APY-9では機械式&電子式走査18chを備え、更に高度なデジタル情報処理技術を導入してUHF帯レーダーの弱点を克服したようである。
●APY-9レーダーは3つのモード、つまり全周を10秒間で捜索するモード、機械的回転で全周を捜索しつつ電子的に特定領域の探知を強化するモード、機械的回転を止めて特定方向だけにビームを指向しして捜索を強化するモードがある
●海軍航空部隊や製造企業関係者は、APY-9の開発は現APS-145レーダーからの「2世代進歩」を意味すると表現している
NIFC-CA構想の中核E-2D
E-2D.jpg海軍関係者はAPY-9レーダーの対ステルス能力に直接言及していないが、海軍が公開して推進している作戦構想NIFC-CA(Naval Integrated Fire Control-Counter Air)では、中核を担うE-2Dの能力をそのように期待している
●例えばNIFC-CAでは、友軍戦闘機(F/A-18E/F)が発射したAIM-120 AMRAAMや友軍艦艇のSM-6ミサイルを、最新データリンクを用いて発射母体レーダー覆域外の目標にE-2Dのデータを利用して誘導する構想になっている
●また、これまでのNIFC-CA構想に基づくミサイル発射試験でも、有効性が確認されたと報じられている
●NIFC-CA構想に基づく部隊編成は、2014年10月に初のE-2D飛行隊(VAW-125)が初期運用能力獲得を求められたときに実現する。
米海軍は計75機のE-2D購入を計画しており、日本もE-2Cの後継としてE-2Dを候補に考えている模様
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日本のE-2Cは機械式走査1chのAPS-145レーダーですが、UHF帯使用のレーダーであり、理論的にはステルス機探知の可能性がありそうです。航空自衛隊の方に実態を聞いてみたいものです
E-2Dによる「戦闘機サイズのステルス機探知&迎撃兵器指向可能」の正否とその程度は不明なれど、米海軍トップが「ステルス技術だけでは10年後は戦えない」と発言(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22)した背景には、今は米国独占の技術でも、10年も経てば中国等が模倣するとの見積もりがあったのかも
F-35-test.jpgステルス機が見える見えない以前に、戦闘機は脆弱で厖大な地上インフラに依存し、維持整備のため長期&多額の経費とマンパワーを要し、天候の影響を受け、要員養成に時間と経費を要することから、中国のA2AD脅威に直面した日本にとって「非効率極まりない投資対象」です
安価で容易に手に入る精密誘導兵器が全世界に拡散する中、厳しい財政状況下にある日本がなぜ「非効率極まりない投資」を続けるのか? 単なる米空軍追従や組織防衛が背景なら、米海軍E-2Dが突きつける現実を直視すべきでしょう。
同時に、航空自衛隊は海上自衛隊を差し置いてでも米海軍にアプローチし、米空軍とは異なる視点に触れて頭を冷やすべきでしょう。
米海軍の航空作戦構想
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と強力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「なぜ8機EA-18Gが必要か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-13
「海軍トップ:ステルスはあと10年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22

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