米空軍の戦略攻撃コマンド(正確にはGSC:Global Strike CommandでICBMと戦略爆撃機を保有)司令官のStephen Wilson中将が空軍協会のインタビューを受け、B-2やB-52戦略爆撃機について語っています。
同司令官の配下にあるICBM部隊で不祥事が次々に発覚し、Wilson中将は釈明と対策に追われる日々ですが、アジア太平洋や欧州に引っ張りだこの戦略爆撃機については「語りたい」内容が多いようです。
ICBM部隊の話はカットして、任務の話が出来る爆撃機関連の話題をご紹介します。ただし写真には、女性空軍長官とともにICBM不祥事の会見に登場した同中将のものも活用いたします。ご苦労様です
B-52はアジア派遣前に海軍とASB議論
●今年の春で戦略爆撃機のグアム島ローテーション派遣(CBP:continuous bomber presence)が10周年を迎えるが、A2AD対処訓練の良い機会でもある
●B-52部隊を4チームに分け、半年ローテーションでグアムに派遣しているが、派遣前にはメンバーを横須賀の第7艦隊や海軍航空基地に出張させ、海軍の演習に参加させたりもする
●これにより、エアシーバトルが何を意味し、どうA2ADに対応するかを海軍関係者と意見交換し、派遣されたときには既に、海軍担当者との意思疎通の基礎ができている状態ができる
●半年の派遣間は米本土基地所在時とは全く異なる環境で訓練し、ASBやA2ADの視点で改善し、多様な国との共同訓練も経験する。
●この経験は極めて貴重で、本土の母機地にいる3/4のメンバーとも教訓を絶えず共有している
爆撃機で対北朝鮮&対中国ADIZ
●過去1年半の間に、戦略爆撃機部隊は世界情勢が緊迫した2つのイベントで、大きな役割を果たした。
●1つは北朝鮮対応で、米本土モンタナ州から38時間飛行してB-2が韓国上空を飛行した任務である。F-16にエスコートされ飛行するB-2の姿が、地上で勤務する仲間にサインを送った
●この間、私(Wilson司令官)は統合参謀本部議長や副議長と何度も議論し、いかに対応するかを協議した。
●中国ADIZ対応では、何年もグアムから当地域を飛行してきたB-52が、目に見える形で米国の力とパワーを示した。
●ADIZ内飛行は「通常の訓練ミッション」で、太平洋軍司令官と太平洋空軍司令官の指示により、朝鮮半島周辺から飛来したものであった
空中発射巡航ミサイル延命と後継
●米空軍は、1982年から運用している空中発射巡航ミサイル(ALCM)AGM-86Bの10年延命に約300億円の予算を確保するとともに、現有ミサイルの老朽程度把握試験を行っている
●なおAGM-86は囮無人機として開発された機体を活用したミサイルで、射程約2500km。核搭載型と通常型があり、B型は核用。C型とD型は通常弾頭や貫通弾頭。
●B-1にも搭載可能だが、B-52で使用されている。湾岸戦争で初使用され、2003年のイラク戦争でも投入され、85%の命中率を誇ったといわれている
●更にGSCのWilson司令官は、次期長距離ミサイル計画(LRSO:Long Range Standoff)に強い関心を示しており、2020年代半ばまでに現有ALCMの後継として導入したいと考えている
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ウクライナ情勢もあり、戦略爆撃機は欧州にもローテーション派遣されることが増えると思います。そしてアジア太平洋でのプレゼンスが減少するのでしょう。ゼロサムの世界ですから
ICBM部隊の規律違反続出やカンニング問題等、悩み多きGSCのWilson司令官ですが、次期長距離ミサイル計画(LRSO)は何とか推進していただきたいものです。A2ADには長射程の誘導兵器が不可欠ですから・・・
それにしても、GSCのWilson司令官は、James空軍長官(赤い服の女性)から色々チクチク怒られてるんでしょうねぇ・・・