米空軍のアジア戦力ローテーション派遣目論み

AFM0314cover.jpg3月号の米空軍協会機関誌が「Pacific Rotations」との記事を掲載し、米太平洋空軍PACAFがアジア太平洋地域で目論む戦闘飛行部隊のローテーション派遣「アジア版Checkered Flag」について方向性を紹介しています。
冷戦期に欧州で行われた「Checkered Flag展開」とは、米本土等の米空軍戦力をローテーションで欧州各地に順次展開させ、派遣先の空軍と訓練をさせて双方の練度向上を図り、併せて米空軍の展開能力向上やや地形完熟に資するものでした。当時は、全ての米空軍戦闘機&爆撃機部隊が、1年半から2年毎に必ず欧州への展開を経験していた模様です。
政治的にも財政的にも、アジア太平洋地域に新しい米軍基地を設けて部隊を常駐させることは困難であり、「アジア版Checkered Flag」に目が向けられているわけです。
まんぐーす的には、アジアでのローテーション派遣は、嘉手納やグアムや西日本の自衛隊飛行場が中国軍の初動攻撃で機能喪失する場合を予期した「航空戦力再構築基地の準備」の意味合いが強い施策だと思います。
Andersen AFB2.jpgもちろん、展開先の空軍の「能力構築支援」も目的の一つですし、南シナ海やインド洋での米軍の自由な活動を確保するための「足場確保」でもありますが、数少ないアジア太平洋地域での航空戦力拠点を増やす取り組みだと認識すべきでしょう(特に強靱性強化を無視している日本は!)
1月にインタビューを受けたカーライル太平洋空軍司令官は、「継続中の中東での作戦のため、また予算の削減のため、アジア太平洋リバランスは言葉通りには進んでいない。資金があれば出来ることも、強制削減の中では非常に難しい」と訴えており、どこまで「Pacific Rotations」構想が実現するか不明ですが・・・
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-11
その前に「大きな視野で作戦計画を」の話
Locklear.jpg●ロックリア太平洋軍司令官は各軍種の指揮官に、従来計画してきた個々の事象に特化した対処計画ではなく、地域全体を視野に入れた情勢緊迫や危機対応の計画に取り組むよう促している
●カーライル太平洋空軍司令官も、これまで様な「台湾海峡危機」や「北朝鮮南進対処」毎のプランでなく、全担当エリアを包含した態勢の備えを「Phase Zero」から「Five」段階で準備しようと太平洋軍司令官は取り組んでいる、と語っている
2004年から継続し、米本土から爆撃機をグアム島にローテーション派遣するCBP(continuous bomber presence)は、アジア太平洋地域での米軍プレゼンスと地域国の訓練を訓練を通じた能力向上、そして地域の安定に貢献してきた
中国がADIZもどきを一方的に宣言した際の当該空域での(B-52の)飛行や、フィリピンを直撃した台風の際の人道支援にも、戦力派遣で構築された地域国との関係が大きく貢献している
「アジア版Checkered Flag」について
B-52Young.jpg●「アジア版Checkered Flag」とは、グアムにCBPとして爆撃機、嘉手納や韓国にTSP(Theater Security Packages)としてF-22やF-16を派遣してきたように、大規模な演習から小規模の展開訓練の機会をより増やし、南アジアから西アジアへの戦力展開を増やすことである
インド南部の基地やタイのウタパオやコラットやウドンタニ、マレーシアやインドネシアやシンガポールにも、扇を広げるようにローテーション派遣を拡大する構想である
●太平洋空軍司令官は、他エリアからの太平洋軍エリアへのローテーション派遣展開を想定しており、「より多くをアジア太平洋地域に連れてきたい」と語っている。またこの際、日本や韓国の基地は引き続き重要であるとと同時に、西及び南アジアへの展開を支援する
Carlisle-pacaf2.jpg●本年1月上旬、米国務省と太平洋軍関係者がマニラでフィリピン関係者と、米軍のフィリピンでの活動や地位について協議した。カーライル司令官は、クラーク基地に米空軍が大規模に戻る事はないが、マニラ北部の「Cubi Point」や「Basa」飛行場から比空軍と共に活動するかもしれないと述べている
●豪州とはアボット政権誕生後に交渉が再開しており、2015年以降速やかに豪州北部の豪空軍基地である「Darwin」や「Tindal」へのローテーション派遣実現に向け協議を加速している
●上記豪空軍基地に米空軍爆撃機も派遣できるよう、飛行場ランプ地区の路面強化等に関する経費負担についても話が進められている。また豪州北西部の「Pilbara」等の別の飛行場への展開も話し合われている
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南アジアから西アジアへの戦力展開を増やす」とのことで、インドやタイやマレーシアやインドネシアやフィリピンや豪州の基地や地名が挙がりました。
F-15andFA-18.jpg日本や韓国の基地は重要だけど、「南アジアから西アジアへの戦力展開」の「支援」を期待するとあります。在日や在韓米軍のアセットを、普段から中国の脅威から遠く、初度攻撃で被害を受けにくい「遠方の避難基地」に慣れさせることに大きな狙いの一つがあると思います
ロックリア太平洋軍司令官が主導する「大きな視野で作戦計画を」は、なるほどその通りのご指摘です。
南シナ海や東シナ海だけで封じ込める事が出来るとは思えませんし、朝鮮半島だって色んな波及がありえるでしょうし・・・
「カーライル太平洋空軍司令官がリバランスの実態を語る」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-11
「脅威の変化」を体に叩き込む
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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