1月30日、米海軍の情報機関であるONI(Office of Naval Intelligence)が、米中経済安全保障評議会に対し、中国海軍に関する分析レポートを提供した模様です
先日は米空軍の情報機関NASICによる中国空軍と弾道ミサイル部隊に関する分析レポートをご紹介しましたが、本日は海軍版の中国軍分析です。なお米海軍の分析機関がこの種のレポートを出すのは、初めてだそうです
中国空軍が「アセット対アセット」の戦いを追求していなかったように、中国海軍も、弾道ミサイルや巡航ミサイル、目標ターゲティング能力、隠密性の高い潜水艦に力を入れ、米側の脆弱な作戦基盤や貴重なアセット無効化を狙っているようです
ONIは中国海軍の状況と将来を
●中国海軍は、77隻の水上艦艇、62隻の潜水艦、55隻の着上陸艦艇、85隻のミサイル艇を保有している。2013年には新たに約50隻が、着工、進水又は就航し、2014年も同様のペースで発展を続ける
●この精力的な海軍近代化により、2020年までに、中国海軍の85%の海洋アセットは米海軍基準で「近代的な」装備となる
●今後10年間で、中国海軍は沿岸海軍から外洋海軍への変革を完成させるだろう
●90年代には沿岸防衛用の貧弱な装備しない単一任務の艦艇ばかりだったが、最新の「Luyang III級DDG」はフェーズドアレーレーダーを装備し、長射程の対艦巡航ミサイルASCMを備える。同艦には更に、対潜水艦ミサイルや対地攻撃巡航ミサイルも装備される
●このASCMは中国海軍に見通し線外の攻撃力を与えるが、タイムリーな目標照準(ターゲティング)が重要であり、中国海軍は目標照準に戦略及び戦術レベルで大きな投資を行っている。また円滑に目標情報が共有できるよう、通信やデータリンクへの投資も重視している
●空母運用に関してレポートは、2020年までには水上艦艇運用をサポートする限定的な能力を獲得するだろうと分析し、「空母甲板で固定翼機を運用する、複雑で長期間を要する学習に取り組んでいる」と表現している
●レポートは中国海軍の急速な潜水艦増強を懸念している。現時点での潜水艦保有数は、攻撃原潜5隻、戦略原潜4隻、ディーゼル攻撃潜水艦53隻である
●戦略原潜では、最新のジン級が2014年に戦略任務を開始する見込みで、射程約7000kmのJL-2のSLBMを備えた中国初の水中核抑止アセットとなる。JL-2は東アジア沿岸から、アラスカ、ハワイ、米本土西海岸の一部を射程に入れる
●中国潜水艦は過去10年で攻撃能力を飛躍的に向上させており、10年前には対艦巡航ミサイルを数隻しか装備していなかったが、今では艦艇の半数以上がASCMを保有している。
●今後配備が進む新型の「type-095誘導ミサイル潜水艦」は対地攻撃能力を備えると見られ、アジア太平洋地域の米軍拠点への攻撃能力が一層向上する
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中国の社会構造や環境問題の実態等を見聞きすると、中国はもうだめだな・・・と思うことも多いのですが、中国の周到な軍事力拡大とその方向性は「お見事」です。
米空軍NASICの分析にもあったように、「相手の正面から戦いを挑むのではなく、相手の弱点を巧みに突く」思想が見事に具現化されています
西側がF-35に囚われ、海軍水上部隊がF-35等の空母艦載機を主体にした「NIFC-CA」なる対中国構想で迷走する状況を見るにつけ、隠密性の高い潜水艦発射の精密誘導長射程ミサイルとターゲティング技術に磨きを掛ける中国軍の素晴らしさが際立ちます。
「海国防衛ジャーナル」による解説
→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50720787.html
「米空軍NASICによる中国空軍分析」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-02
「米海軍の対中国航空作戦構想NIFC-CA」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26