14日にゲーツ元国防長官の回顧本「Duty: Memoirs of a Secretary of War」が出版されるらしく、その内容についてNYT紙とWP紙が報道したようです。
タイトル通り、イラクやアフガンでの戦いに関するゲーツ氏の回顧録のようですが、オバマ大統領やホワイトハウス関係者が軍やその戦略を信頼せず、現場の細部に直接口を出す様子を痛烈に批判しているようです
国防長官時は、現役国防高官や軍幹部による政策批判や情報リークを厳しく諫め、意見は言うが命令には忠実だったマーシャル将軍を手本としたゲーツ氏ですが、退任後2年半を経て、再び国のために立ち上がったのかもしれません
早くもレームダック化が公然と囁かれるオバマ政権ですが、人気者ゲーツ氏の言葉は、オバマ大統領だけでなく、バイデン副大統領にも強烈な一撃を与えており、痛手となるでしょう。
7日付Defense-News記事によれば
●2011年3月の会議でゲーツ氏は感じた。「大統領は部下である現場指揮官を信頼していなかった。カルザイ大統領に対してもそうだし、彼の自身の戦略さえも信じていなかった。戦争のことを考えていないと私は感じた」、「彼にとって撤退のみが頭にあったのだ」
●とげとげしいホワイトハウスとの激論の末、大統領が3万人の増派を増派を許可しておきながら、大統領は疑念に取り付かれ、軍への不信感に満ちた文民補佐官に囲まれていた。「失敗するとまでは確信していなかったにせよ、大統領は懐疑的だった」
●(大統領の部下である)国防長官としての落ち着いた腰の低い姿勢とは対照的に、彼は回顧録の中で時に辛辣な表現で攻撃を行っている
●ニクソン政権時代から下級のCIA職員として時々の政権に仕えてきたゲーツ氏であるが、オバマ政権のホワイトハウスが持つ「管理したい体質」、つまり文民補佐官が軍事作戦に理解不足でありながら、常々から国防省の所掌業務に干渉することに対し不満を表明している
●大統領や副大統領を含むホワイトハウス高官の間には、あまりにも早い段階から軍の主要幹部に対する会議や不信感がはびこっており、国防長官として軍指揮官である大統領と米軍指揮官との関係を保つのに多いに苦労した
●オバマ政権のホワイトハウスが、あまりにも戦いの不確かさや予測不可能性に理解を示さないので、アフガンに関する2009年9月の会議の後、ゲーツ氏は辞任寸前の状態にあった。
●当時のクリントン国務長官をゲーツ氏は高く評価しているが、2007年にブッシュ政権が決断して行われたイラクへの兵員増強に関し、大統領とクリントン国務長官が公に、ゲーツ氏もブッシュ政権時に努力した増派に反対していたことを、ゲーツ氏の前で認めたことに衝撃を受けた
●一方で、ゲーツ氏が当初反対したオバマ大統領によるビンラディン作戦実施の決断を、「これまでホワイトハウスで目にした中で、最も勇気ある決断の一つだった」とゲーツ氏は表現している
米NSCのHayden報道官は大統領を擁護し
●オバマ大統領がアフガンでの戦いの収拾に向けた明確な計画を持ちつつ、継続してアルカイダ撲滅に関与していることは周知の通りである。
●ゲーツ氏はバイデン大統領が過去40年間にわたりほぼ全ての安全保障や外交案件について誤った態度をとり続けていると主張しているが、大統領はこの主張に不同意である。バイデン氏はこの時代を代表する政治家であり、米国の世界における指導力の進展に貢献してきた
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政治に対する閉塞感や不満が渦巻く米国ですから、ゲーツ氏のような「惜しまれつつ」政権を去った人の言葉は大きなインパクトを持つような気がします
日本で翻訳本が出る可能性は低いと思われますが、是非どなたかに取り組んで頂きたいものです
それにしても「過去40年間にわたり、ほぼ全ての安全保障や外交案件について誤った態度をとり続けている」と、これ以上ない言葉で酷評されているバイデン氏。奥様を含め、良い評判を全く聞きませんが、その通りの方のようですね。
WSJも報道
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140108-00000051-wsj-int
ゲーツ元国防長官の関連記事146本
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300801461-1
まんぐーすがこのブログを始めた契機は、ゲーツ氏の言葉を伝えたかったからです
「ゲーツ元長官語録100選」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19