15日付Defense-Newsは、複数の軍及び国防省関係者の話として、米空軍が国防予算の強制削減対応のために「特定機種の全廃」で関連維持設備を含めた経費の大幅削減を検討していると報じています。
「特定機種の全廃」の候補としてA-10やKC-10が議論されており、相当数の削減候補としてF-15C戦闘機も検討されているようです。また更に、機種更新の必要性が叫ばれて久しい次期救難救助機の計画延期も話題になっているようです
15日付Defense-Newsによれば
●米軍の各軍種は2015年度予算案を28日までに国防省へ提出することになっており、国防省は来年2月に議会に提出するまでその内容を省内で検討することになる
●ウエルシュ空軍参謀総長は先週、「特定の機種を全廃した時にのみ、大きな経費削減効果が得られる」、「全機種が検討対象であり、どれに投資するかを決断することに通ずる」と発言している
●空軍報道官もメールによる返信で「全ての選択肢が検討中であり、何も決定されていない」とコメントを控えている
●国防省が7月に発表したSCMR(Strategic Choices and Management Review)検討の過程では、5つの戦闘飛行隊削減に言及されていたところである。
「ヘーゲル長官SCMR会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01
●複数の軍や国防省関係者によると、340機のA-10攻撃機を全廃する案が議会に投げられると考えられる。昨年は約半分のA-10飛行隊を削減する案が提出されたが、(地元部隊が削減され、経済に悪影響を及ぼすことを恐れた)議員の強硬な抵抗にあった
●59機を保有するKC-10も検討対象に上がっているようだ。ブーム方式とドローグ方式の両方を備え、米海軍と空軍、更に諸外国機にも同時に給油できる便利な空中給油機である
●全廃ではないが、250機保有のF-15Cもその一部を削減する案が検討されているようだ。F-22と並ぶ制空戦闘機であるが、A-10同様に「単一任務機」であることがネックとなっている
お馴染の専門家の意見も
●専門家のAboulafia氏は、空軍の削減検討は議会により阻止されてきたが、予算の実情によりいよいよ削減を現実味あるものになって来たと語っている。A-10は対テロでもそれほど有用ではなく、アジア回帰でも期待されていない。地上戦闘からの離脱傾向も反映している、と説明している
●KC-10について同氏は、空中給油機の重要性や機体がまだ若いこと、更に地域経済への影響が大きいことからすると、空軍のこの提案は議会への「当て付け」的な提案だと考察している
●F-15Cの削減検討について別の専門家Grant女史は、F-35の調達速度を維持するための手段だと見ている。同専門家はF-15Cの削減に当然リスクはあるが、リスクはどの決断にも付き物であり、決断を遅らせるリスクの方が大きいと見ている
●一方でGrant女史は、HH-60救難ヘリの後継機種計画の延期には慎重な姿勢である。次期救難ヘリ計画は既に10年にわたって後回しにされており、これ以上リスクを負うのは危険だと述べている。リスクは他に負わせるべきだとの考えである
●これまでの議論から明らかなのは、空軍幹部が優先事業を守る強い意志を持っていることである。既に固定価格契約で比較的順調に進んでいるKC-46A空中給油機、生産を開始している唯一の5世代戦闘機F-35、更にアジア太平洋長期戦略の鍵となる次期長距離爆撃機が優先事業である
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議会や議員が、地元利益誘導のために「空軍の削減案に反対」との構図が米国的です
もちろんF-35に固執しているところが「亡国的」であり、米空軍も救いがたいのでしょうが・・・
しかし、いつまで米議会内のデッドロック状態が続くのでしょうか? 政府と議会と軍の閉塞状態を「潜在的敵対国」に付け込まれない事を祈るばかりです。
シリア問題を巡るあれこれを見るに、そんな気持ちになる今年の秋です。
「B-1爆撃機も全廃の対象?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19-1
「SCMR後のQDRを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-08