17日、オランダ政府がF-16の後継機種をF-35に決定しました。15年にわたる国内議論を経て決定したそうですが、価格や維持経費に関する懸念を抱えたままの見切り発車のようです
17日付Defense-Newsによれば
●オランダはF-35が本当に正しい選択なのかに関し、強い支持と懸念の間で揺れ動いたあげく、15年にも及ぶ選定の旅を終えることになった
●政府の声明は「熟慮の末、ハイテクで未来志向の空軍のためにF-35を選択した。軍事作戦の観点から、F-35は最大のオプションを提供してくれる」と綴られている
●オランダは37機(筆者注:当初は85機の予定)のF-35A型(空軍用)に約6000億円をF-35購入予算に充てているが、価格が未確定なため、緊急予備費として10%を準備している。これに関し政府声明は「F-35経費増で他の予算が排除されないよう、予備費を確保した」と説明している
●政府声明は他に、2020年代半ばのF-16運用終了に合わせ、2019年にF-35が導入されるとしている。
●ロッキードマーチンのF-35責任者Lorraine Martin女史は米空軍協会総会で、「オランダの発表はF-35計画にとって極めて大きい。本計画にとって素晴らしい日になった」と語った
●オランダを含め9ヶ国が開発パートナー国だが、全ての国が自動的に購入すると決まっているわけではない。デンマークはまだ判断しかねており、カナダは政治スキャンダルがらみで凍結されたままである(まんぐーす注:その他のパートナー国は調達機数の削減か購入決定先送りの状態)
●Martin女史はは韓国のF-X選定に関し「韓国が選定のプロセスにあることは承知している。韓国にとってもF-35がベストだと信じており、選定結果発表を待っている」と語った
同日、空軍協会総会で米軍F-35責任者は
●昨年の空軍協会総会で「F-35企業と米軍F-35計画室との関係は、私が過去に経験した中で最悪である」との爆弾発言を行ったChris Bogdan中将が再び同総会に出席し、「この1年で大きな変化があった」と語り、同時に「cautiously optimistic」と計画全体を表現した。
●同中将は「昨年私はこの場所に立ち、手榴弾を投げ込んだ。意図的なモノだった」と語りました。またそれ以降、製造企業との関係が改善し、例えば企業側の協力を得て「cost war-room:コスト削減室」を設け、材料調達から維持整備に関するあらゆる分野でコスト削減を司らせたと説明した
●更に「コスト管理は引き続き本計画の優先事項だ」と語り、総経費見積が3年前の見積もり価格110兆円から85兆円に低下していると強調した。しかし同時に、50年に及ぶ経費見積もりには多くの「前提」が置かれていることも認めた。
●また、予算の強制削減の中でもF-35が影響を受けず、購入機数が削減されていないことにも触れ、「2014年度予算案もまだどうなるか不確定だが、強制削減によりF-35計画が壊されないようにすることが私の使命だ」と宣言した。
●同中将は、F-35の販売機数減って単価が上昇し、更に販売数の減少を招く「死のスパイラル」には入らないと自信を示し、海外の購入意欲はおおむねオランダのように依然強いと語った
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しつこいですが、2点申し述べます
●F-35開発の問題はほとんど解決されていません。いい加減な「緩い」試験は進捗半分以下で、肝心の戦闘用ソフト開発の目途が立たず、完全な機体の完成予定は事実上未定。
兵站支援システムもカタログだけでその実態は不明。今後、米国及び諸外国も調達機数削減は必至で、価格も高騰すると考えるのが極めて自然。更に、日本国内組み立てにするだけで価格1.5倍との評価有り。
●弾道や巡航ミサイルの発達と拡散、防空能力の向上を受け、戦闘機への投資を絞るべきと全てのシンクタンクが米軍に提言。F-35に関しても調達中止から数割削減まで厳しい評価。中国の真正面に近接する日本は、米軍より遙かに厳しい軍事環境。
従って戦闘機の重要性は「ウナギ下がり」。戦闘機を活用したいのなら、機体より搭載装備や兵器に投資すべき。
シンクタンク研究の代表例
4大研究機関が国防省に提言→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30
CNASは空母とF-35調達中止を→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-14
CSBAもF-35大幅削減を→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28
以上2点についてはこちらに詳しく
脅威の変化を語る→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
戦闘機の呪縛を解け→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「亡国のF-35」関連記事80本
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1