台北発6日付Defense-Newsが、中国がロシアから輸入しようとしている戦闘機と防空ミサイルにより、台湾の防衛は益々困難になると報じています。
記事は軍事技術的に厳密なものではありませんが、中国の圧倒的な軍事力増強と米国による台湾への武器供与が「および腰」な中、ほとんど議論もされなくなった台湾防衛について考える機会ですので取り上げます
なお、中国本土から台湾まで最短は150km、尖閣諸島までは約300kmです
台北発6日付Defense-News記事によれば・・・
●中国がロシアから導入しようとしている2種類のレーダーにより、台湾は益々苦境に陥るだろう。キーワードは400kmで、中国本土から台湾全域をカバーできる探知又は射程距離であり、尖閣諸島にも脅威を与えうる距離である。
●一つは射程400km(?探知距離)といわれるS-400地対空ミサイルで、もう一つはSu-35S戦闘機に搭載される探知距離400kmのIRBIS-E radarであるが、仮に中国が入手すれば飛躍的に能力が向上することになる
●S-400は米軍が保有するパトリオットの2倍の射程を有すると言われ、ロシア軍の発注分が終了する2017年以降を目途として契約交渉が進められているとの報道がある
●S-400SAMのレーダーは地上配備であり、遠距離の低空目標は探知できないが、それでも台湾緊急事態時における米国の対応を難しくすることは間違いない
●Su-35SのIRBIS-Eレーダーは、Xバンドのパッシブ電子スキャンレーダーで30目標同時追尾可能、更に対地モードでは4地上目標同時可能で、地上1個と空中側索を同時可能な能力を備えている
●Su-35S交渉に関する6月10日報道では、ロシア関係企業重役が「最終的な契約は今年末になるだろう」と語り、ロシアの戦略研究機関関係者は「11月にモスクワで予定されている中露軍事技術協力会議で契約が行われるのでは」と見ている
●具体的には、当初24機で、その後24機を追加するオプション保持で中国側は計画しているようだ。米国にはそれほど大きなインパクトはないが、66機のF-16C/D購入が米国に認められず、現有F-16A/Bや国産機の能力向上しか認められなかった台湾にとっては悪いニュースである。
●中国が、S-400やIRBIS-Eレーダー情報を中国AWACSの情報と融合して使用できるか、またデータリンクがどれほどか等については依然として明確でない部分が多い。
●また台湾は、Leshan山に設置した新型レーダーのジャミング機能を活用して中国レーダーに対処することが想定できる。同レーダーは世界で最も強力なレーダーの一つで、米軍に直接データを送信する機能も備えていると言われている
●台湾が導入を進める巡航ミサイルに対し、Su-35Sが対処能力を有するかもしれない
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この記事には、いくつか確認を要する部分があります。
S-400やIRBIS-Eレーダーの能力が本当にそれほどなのか? レーダーの探知距離を生かすミサイルが有るのか? ロシアが関係が微妙な中国に対し本当にフル能力の装備を売るか?等々です。
特に中露関係が後退気味の中、武器取引交渉が難航との指摘があります
「秀逸なロシア分析:中露を例に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-03
「露は日米露の軍事演習を目指す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-09-1
でも仮に導入されれば、中国本土から尖閣諸島までは約300kmですから、S-400やIRBIS-Eレーダー導入の影響は日本にとっても無視できないものでしょう。
加えて、台湾が装備したジャミング機能付き新型レーダーも気になるところです。日本が無視している分野ですから・・・
台湾関連の過去記事
「台湾と中国新政権」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-26
「10年不履行:台湾への潜水艦売却」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-28
「更に悲しき台湾F-16話」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14
「哀愁の台湾F-16能力向上」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-23
「米は台湾に最新F-16売却するか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-23
「米中軍事対話と台湾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-11
「台湾空軍の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-14