賢明でなく、受け入れ難いことが明らかであっても大胆に変えざるを得ない
3日、ヘーゲル国防長官は初の本格政策スピーチを国防大学で行い、国防予算の強制削減に対処するため、「賢明でなく、受け入れ難くいことが明らかであっても」組織や給与や装備品調達を大胆に変えていかなければならないと訴えました。
日本では、本スピーチの北朝鮮に関する言及(「現実で明確な危機」)ばかりが取り上げられていますが、日本への長期的影響を考えると、国防省や米軍の変革(削減)に関する部分が重要ですのでご紹介します(具体的な数字や部隊に言及はありませんが・・・)
ヘーゲル長官は国防大学学生等を前に
●カーター副長官とデンプシー統合参謀本部議長に、(5月末までに)国防省の戦略的選択と管理に関するレビューを行うよう命じている。そこでは、脅威や課題、リスクや機会と戦力優先度や予算額を結びつけて検討している
●本レビューでは、現存の構造・装備等の削減といった視点だけでなく、21世紀の現実や課題に対応する全く新たなモノを含めた「大きな選択」を検討している
●国防省予算の継続的膨張の原因は、前線の経費ではなく、給与や司令部等経費や老朽装備品の更新経費である。これらを精査しないと、最終的には軍の即応性や作戦経費を食いつぶすことになる
●装備品の更新で言えば、計画された予算を超える、高価で開発リスクの大きい装備に依然として頼っている。
●また国防省は、前線の指揮官の要望により迅速に効率的に答える調達システムを造らなければならない
●人的側面では、兵士と文民の必要数、どの軍種にどれだけ、士官と下士官の比率、戦闘部署と支援部署と行政部署の比率などをレビューで再評価しなければならない。国防長官室、統合参謀本部、戦闘コマンドもレビューの対象である
●特に司令部機能と支援組織への予算配分をレビューで精査する。また、冷戦終了後に大幅に陸海空軍戦力が縮小したにもかかわらず、中将や大将ポストが縮小した部隊の上に残っている。
●一般企業と軍事組織は異なる。しかし、私企業が過去30年余り取り組んできた上中間管理職削減は、組織の機敏性と効率性を増し、若手を活性化している
●調達の仕組み、給与手当や組織編成を急激に変えることは、賢明でなく受け入れがたいことであり、政治的にも不可能かもしれない。しかし如何に懸命により良く行うかを考えていくしか道はない
●私の前任者であるゲーツ及びパネッタ国防長官は、全省的なコスト削減を推進してきた。しかし今次の強制削減及び不透明な予算状況は、より急激で大きな削減を求めている
●よりハードワークし、政治面や制度面での大きな障害を乗り越え、より困難な選択と戦略的優先順位づけに取り組まねばならない
●(ここで脅威の変化に言及し、多様な脅威や課題があることを再確認。そしてサイバー空間での戦いを特に強調)
●大半の安全保障課題は政治的、経済的さらに文化的側面を持っており、必ずしも通常の軍事戦力に解決を託されたわけではない
●将来の戦略計画は、国防省が受け継ぐ強みであるリーダー育成、訓練、機動性、兵站、特殊作戦、サイバー、宇宙、研究開発を重視する
●米国がリードしないような世界を、子孫に引き継ごうとは思わない(A world where America does not lead is not the world I wish my children to inherit.)
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ヘーゲル長官の講演を報じる米国防省web記事を用い、北朝鮮部分を除いて「取りあえず」ご紹介しました。 細部についてはスピーチ原稿をご確認ください
→http://www.defense.gov/speeches/speech.aspx?speechid=1764
「大半の安全保障課題は政治的、経済的さらに文化的側面を持っており、必ずしも通常戦力による解決を託されたわけではない」との表現は、ゲーツ元長官による「議会で国務省の予算増額要求の応援演説をしたい」と通じるもので、マレン元統合参謀本部議長による「軍事力は最終的な解決手段ではなく、かつ最終手段にはなり得ない」とも対応する表現だと思います
でも、ヘーゲル氏やケリー国務長官が言うと、より一段と「オフショア」な香りがしますねぇ・・・。
5月末が期限になっている、ヘーゲル長官が命じた「レビュー」の結果に注目しましょう。もしかしたらシャングリラ・ダイアログ(5月末)で言及があるかもしれませんね。
「独立した空軍にこだわらない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-23
「28の質問で優先事業決定へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-14-2
「オフショアコントロールを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-13
「新国防戦略とoffshore balancing」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27
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