15日、ヘーゲル国防長官はイランや北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上とその脅威を踏まえ、米本土防衛のための迎撃ミサイルを増強すると発表しました。その一環として、日本に2つ目のXバンドレーダーを設置することにも触れています。
本年1月には、本土ミサイル防衛担当の米軍幹部が、「長距離弾道ミサイル対処だけでなく、今後10年で短・中距離ミサイル防衛にも取り組む」と発言していたところですが、今回のヘーゲル長官の発言はICBMを対象としている模様です。15日付米国防省web記事より
ヘーゲル長官は15日の会見で・・・
●イランや北朝鮮は弾道ミサイル能力を向上させており、米国は先手を打ってこの脅威に対処しなければならない。そのため地上配備の迎撃ミサイルを増強する
●現在米国は限定的なICBM攻撃に対処するため、26発の迎撃ミサイルをアラスカのFort Greelyに、4発を加州のVandenberg空軍基地に配備しているが、追加で14発をアラスカに配備する。
●これにより、迎撃確率が5割上昇する。経費は約900億円で、2017年9月までに配備予定であるが、試験終了までは配備しない。
●米国は日本とチームを組み、日本に追加の弾道ミサイル用レーダーの配備を行う。このレーダーは、北朝鮮から発射された弾道ミサイルをより早期に探知して追尾してくれる
●14発の迎撃ミサイル追加配備とは別に、更なるミサイル配備場所を検討するため、米東海岸の2箇所と西海岸の1箇所で環境影響調査を行っている。更なる配備については何も決定していないが、環境調査の結果によっては、計画を早めて実施する
●進度が遅い「SM3-2B program」をリストラし、資源を追加の迎撃ミサイルに投入する。これにより他のSM3ミサイルの計画や地上配備迎撃システムの能力向上に資する。
●ポーランドやルーマニアを中心に進めている欧州NATOでの「European phase-adaptive approach」は計画通りに進めている。これらの計画全体で、イランや北朝鮮からのミサイル脅威に対処する米国の能力向上を図っている。
///////////////////////////////////////////////////////
昨年12月の北朝鮮による衛星打ち上げ(弾道ミサイル)は、大きなインパクトがあったんですねぇ・・。米国の評価がこの決定に結びついているわけですから・・。
ちなみに、「海国防衛ジャーナル」(左図も同サイトから拝借)では上記発表が北朝鮮が開発中の「KN-08」ミサイル対応だと分析しています。まだ試射も行われていないようですが、「大本命」の脅威だそうです。
併せて、左図の既存2箇所のミサイル配備から、西海岸に追加のミサイルサイトは不要で、東海岸への配備も完全に不要だとの軍関係者の姿勢と同サイトの意見を紹介しています。
→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50696461.html
ちなみに、日米が共同開発しているのは「SM3-2A」で、今回リストラされるのは「2B」です。
「2A」で日本は、先端のノーズコーンと2段目と3段目の推進装置に関与しています。
これを機に、本年1月に米軍幹部が発表した、短・中距離ミサイル防衛にも取り組むとの計画も復習しておきましょう。
////////////////////////////////////////////////////////
本年1月9日付米国防省webサイト記事は、米本土の防空やミサイル防衛を担当する北米コマンドが、これまでの長距離弾道ミサイル対処だけでなく、今後10年で短・中距離ミサイル防衛にも取り組むとの同コマンド幹部の発言を紹介しています
米本土防衛でなぜ短・中距離ミサイル防衛なのかについては、「兵器技術の拡散と米国に敵対的な組織や国家の動向等を踏まえ・・」と説明していますが、具体的にどんな(潜水艦や艦艇発射ミサイル?)脅威をイメージしているのか等々には触れていません。
北米軍のトドロフ副作戦部長は・・・
●長距離弾道ミサイルから米本土を守る能力を更に洗練すると同時に、テロリストやならず者国家による短・中距離弾道ミサイル脅威に対応する能力向上に取り組みたい
●北朝鮮が長距離ミサイル発射に成功し、イランが新しい中距離ミサイルを先週試験したと伝えられる中、米国は両方のミサイル防衛を準備しなければならならない。
●半世紀前から、米本土では長距離弾道ミサイルに焦点を絞ってきたが、兵器技術の拡散と米国に敵対的な組織や国家の動向等を踏まえ、全てのレンジの弾道ミサイルに対応するための統合融合探知・要撃システムを考えている
●現在は約300名の州兵(アラスカ、カリフォルニア、コロラド)が24時間体制で待機についており、アラスカでは26発の迎撃ミサイルが準備態勢にある。限定的な長距離ミサイルに対処する体制を確保している
●現状の能力には満足しているが、脅威は変化しており、我々も進化しなければならない。北米コマンドはミサイル防衛庁と緊密に協力し、長距離ミサイル用に設計されたGMD(Ground-based Midcourse Defense System)を改善する
●これまで米国は、主に中東からの脅威に備えた欧州のミサイル防衛(NATO’s European Phased Adaptive Approach Missile Defense)に重点を置き、2020年までに完成させる計画だが、これを米とカナダにも拡大する
///////////////////////////////////////////////
引き続き、具体的にどんな短・中距離ミサイル(潜水艦や艦艇発射ミサイル?)脅威をイメージしているのかは不明です