15日、ブルッキングスで講演したオディエルノ陸軍参謀総長(Ray Odierno)は、国防予算の強制削減が発動されれば、予備役や州兵を含めた米陸軍兵士を20万人余り削減せざるを得ない可能性や、アフガン派遣部隊の準備訓練への影響が避けられないと訴えました。
強制削減(sequestration)は避けられそうもない・・・との発言が議会の主要関係者から相次ぐ中ですが、陸軍人トップとして行うべき訴えはしていかなければなりません。
国防費のみならず、国家財政全体を襲う強制削減であり、その影響が文字通り「計り知れない」ことから、同参謀総長は「Bermuda Triangle」に突入するようだとの表現を使っています
イベント「The Army of the Future」での講演で
●我々国防省は既に、ゲーツ前国防長官時代の2010年に24兆円もの諸計画を削減し、2011年には更に40兆円もの国防費削減計画を決定している
●しかし今議論されてる強制削減が発動されれば、この上に更に40兆円もの国防費削減が今後10年間に課せられることになる。
●現在我々は、米陸軍の正規兵力を57万人から49万人へ削減する計画を進めているが、実際には49万人よる少なくなるのが現在進行中の状況である。しかし強制削減が発動されれば、我々は「Bermuda Triangle」に入るような財政不透明な領域に突入する
●私の推計では、予備役や州兵を合わせた現兵力約113万人から、20万人を削減しなければならなくなる
●過去12年間にわたり、米軍は史上最長の戦いを継続してきたが、私は今現在の国家安全保障最大の脅威は、予算計画のサイクルが見えなくなっている財政の不透明性だと考えている
●合計で100兆円を超える予算が10年余りの間に削減されれば、部隊の訓練に大きな影響を与えざるを得ない。アフガニスタンに派遣される兵士は、現在9ヶ月で交代するローテーションを組んでいるが、それが維持できなるだろう
●強制削減が発動されれば、小隊や中隊や大隊レベル以上の規模の訓練が不可能になり、小規模な分隊レベルでしか訓練が出来なくなる。これでは十分に訓練が出来ない部隊をアフガンに派遣するか、派遣期間を延長して準備に時間をかけるしか選択肢が無くなる
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「Bermuda Triangle」とは、フロリダ半島を一つの頂点とし、カリブ海を囲むような三角形に囲まれた海域を指し、昔から原因不明の航空機や船舶の遭難が数多く報告されているエリアです。
今でも政財界の御曹司が謎の航空機事故にあったり、有名人のヨットが遭難したり等々の話題に事欠かないエリアで、陸軍参謀総長も思わず心中の描写に使用したのでしょう。
米国内の一般ニュース報道でも、社会保障や教育等々、様々な社会生活への影響が議論され始めていますが、3月1日に米国は、世界は金融市場は、はたまた悪者国家群はどのような動きを見せることになるのでしょうか?
本公演に関する米国防省web記事
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=119315
Brookingsの関連webページ
→http://www.brookings.edu/events/2013/02/15-army-odierno#ref-id=20130215_Odierno1
「強制削減:ワシントンDCの雰囲気」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09
「海軍は空母活動停止も示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-26-1
「空軍2トップが強制削減策を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-15