インテリジェンスに関する英語圏の大学生及び大学院生向け世界的スタンダード教科書:「インテリジェンス 機密から政策へ」から、「インテリジェンスに関するユーモア」との囲み記事をご紹介します。
インテリジェンスに関する約400ページの本格的教科書ですので、「やわらかい」エピソードも含まれています・・・
究極のインテリジェンス教科書といわれるだけに、他のまがい本はこの教科書の引用であることが多い、といわれる書籍ですが、2011年春に日本語版が出版されています。詳しくは本書を紹介した過去記事をご覧ください
究極のインテリジェンス教科書→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22
一般的にインテリジェンスには、HUMINT(ヒューミント:人的情報 人を介して得られる情報)、 SIGINT(信号情報:電磁波を介して得られる)、 OSINT(公開情報:オープンソースで得られる情報)、IMINT(画像情報:衛星写真等の画像情報)等々が含まれますが、「プロ」の人たちには以下のようなインテリジェンスも重要だそうです
インテリジェンスにはこんな種類も
PIZZINT(ピザ情報)
●ワシントンDCに所在するソ連の情報担当者は、夜遅くに国務省、国防省、CIAやホワイトハウスに向かうピザの宅配トラックが多いと、何か危機が発生している指標になると考えていた。
●多数の宅配車を確認すると、担当者はソ連大使館に帰って本国へ打電したという
LAVINT(トイレ情報:LAVATORYから)
●トイレで交わされている会話や思わず関係者が漏らした独り言を、分析の糸口情報とする手法
RUMINT(うわさ情報:RUMORから)
●まさに関係者の井戸端会議でおしゃべりされている「噂」を元にした情報。子弟の学校でのたわいも無い話や外交団夫人のおしゃべりから、鍵となり情報が得られることもある
REVINTやDIVINT(お告げ(REVELATION))や神から(DIVINT)の情報
●まさしく「天の声」的なインテリジェンス・・・。どういった場面で使われるのかは良くわかりませんが・・・。
このほかの興味深い囲み記事
暗殺の是非を巡る議論:ヒトラーは?
●インテリジェンスの一環として、非公然工作の是非や範囲が議論されるが、対象者の暗殺を巡り、その手法を正当化する論拠としてよく提示される例が「ヒトラー暗殺」
●しかしこの例でも疑問がある。政策決定者は「いつ」暗殺の決定をすべきであったか、である。
●1933年に合法的に彼は権力を手にし、1930年代を通じて国民を抑圧したが、彼一人がそのような指導者ではなかった。スターリンはもっとひどかった
●1939年のポーランド侵攻や1942年のユダヤ人抹殺承認まで、ヒトラーの行動の多くは異常とはいえなかった。WW2以前にヒトラー暗殺を決定するには、かなりの洞察力が必要だったはず
●英国のインテリジェンス機関は、戦争中1945年にいたるまでヒトラー暗殺を企てていた。
●それでも暗殺を断念したのは、ヒトラーが軍事指揮官としてあまりに気まぐれで、連合国にとって「価値あり」と判断されたからである
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「インテリジェンス 機密から政策へ」は、膨大な欧米社会のインテリジェンスの教訓を集大成した感がある本ですが、是非東洋の、特に日本のインテリジェンスの歴史も加えて深みのあるものにしたいものです
でも・・・日本のインテリジェンスの歴史を語れる人は今存在しているのでしょうか?
まんぐーすは思います。インテリジェンスとは・・・
●地道な公刊文書の読み込みであり、値する人の話を素直に聞くことであり、謙虚であることであり、偉そうで無知な上司の要望に応じたプレゼンであり、フットワークであり、あらゆる分野への好奇心であり、人間関係であり、時には押しの強さであり、成果を収めても「静かに部屋でハードリカー」であり、毎日何を報告するかに悩むであり、ユーモアの精神であり、淡々と日の当たらぬ部屋での仕事であり・・
●インテリジェンスの世界に派手さは無く、たくさん本や雑誌記事を書いているようでは・・・
インテリジェンス 機密から政策へ
(原題:Intelligence: From Secrets to Policy)
マーク・M・ローエンタール/著 茂田宏/監訳 出版社名 : 慶應義塾大学出版会
出版年月 : 2011年5月 ISBNコード : 978-4-7664-1826-2 (4-7664-1826-3)
税込価格 : 4,410円