「温故知新」シリーズです
ネタ切れで窮していることもあるのですが、周辺国の軍事増強やその質的向上を目にしながら我が国防を考える時、どうしても現状で無策な「Resiliency:強靭さ・抗たん性」をどう向上させるべきか? 何が出来るのか?との壁に突き当たります
その辺りの不平不満は最近の過去記事
「Resiliencyを捨てたのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-1
で乱暴に語ってしまったのですが、本日はもう少し高尚に、米国防省に対してその辺りを指摘した国防科学委員会の指摘を紹介した過去記事を取り上げます
正直言って、米軍内でもまだまだ浸透していないと思います。米軍が最後に空襲を受けたのが55年前・・・、大規模作戦だった湾岸戦争でも敵の脅威はほとんどなし、最近10年のイラク・アフガンでも作戦基盤となる後方の基地は安全な「聖域」でしたから・・・
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過去記事→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-10-1 より
「完全でない環境(Degraded Environments)」とは、アフガンのような不便な場所を指しているのではありません。敵のサーバー攻撃や対衛星兵器によって、米軍が当然のように享受してきたコンピュータシステムやITネットワークが被害を受け、今現在の戦いで前提としている「完全な環境」が失われた状況を指しています。
その「こころ」は、敵のA2AD能力向上をもっと意識し、55年以上空襲を受けたことがないことから生ずる「完全な環境」への慣れを払拭する必要がある、との警告です。
9日、ゲーツ国防長官への報告義務を持つ国防科学委員会(Defense Science Board)の委員長であるカミンスキー氏(Paul G. Kaminski)が、半期の報告を前にして軍事記者の取材を受けています。
カミンスキー委員長は記者たちに・・・
●軍は、より不完全な環境下でも良い仕事が出来るように訓練する必要がある。
●マレン統合参謀本部議長が「国家軍事戦略(National Military Strategy)」で述べているように、宇宙やサイバー空間で効果的に行動できることは、敵の侵略を打ち破る上で必要不可欠である。また、そのようなドメインへのアクセスが制限されたり不能になった場合にも作戦が遂行できる様な能力を伸ばさなくてはいけない。
●サイバー攻撃の影響を局限して封じ込める事を、各指揮官は戦場ではなく、まず演習の場で学ばなければいけない。
●しかし現状では、完全でない環境下での訓練は不足している。指揮統制通信システム全般に影響が予想される、現在は十分予期していない事態に備え訓練しなければならない。
●委員会では、4つのレベルの分けてその準備状況を分析した。戦略レベル、戦域レベル、戦術レベルと個人レベルである。
●個人レベルでの差が大きいとも言える。海兵隊はGPSが使用できな環境でコンパスや地図を使った訓練をしているが、これも階級レベルが上がれ上がるほど、準備は不十分になっている。
●空軍は、かつて電子戦環境下で「Red flag」演習を行ったが、演習全体がめちゃくちゃになるとして以後実施していない。
●訓練には2通りある。最初から完全でない状況下に訓練者を置き、その対処要領を評価する方法。もう一つは、徐々に被害をエスカレートさせ、どこまで訓練者が対応できるかを見る方式である。
●「完全でない環境」での訓練に特別な費用は掛からない。しかし、このような訓練を実施しなかった場合の代償は甚大なモノとなる。
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サイバーや宇宙を最近取り上げてきましたが、この記事もその流れをくむモノです。決して個人的趣味でこの話題を選んだのではなく、国防省の取り扱いが大きいから選んでいます。その辺りに誤解無きよう・・・・。
戦闘機ばかりに注目していては、完全に時代に乗り遅れます。
「脅威の変化を語らせて」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08