24日、米議会の付属機関である議会調査室(CRS: Congressional Research Service)が、世界の武器取引に関するレポートを公表し、2011年の米軍需産業の契約額が史上最高額に達したことが明らかになりました。
このCRSレポートに関しては様々な視点で報道され、その見方の差が興味深いので、米軍事サイト2つと中国系報道1つを比較しながらご紹介します。なお、共通部分の繰り返し記載はなるべく避けました。
30日付「DODBuzz」は・・
●米軍需産業は国内や欧州市場が縮小する中、発展途上国市場に触手を伸ばしているようだ
●2011年の米国武器取引額は、2010年の3倍となり、$21.4 billionから$66.3 billionへ上昇した。この内、$56.3 billionが発展途上国向け取引である
●米国だけでなく、世界の途上国向け武器取引も同期間で$32.7 billionから $71.5 billionへ上昇した。米国がその多くを占めているわけだが・・・。
●本年欧州で開催された航空ショーや武器見本市では、軍需産業が途上国に狙いを定めている様子が明確だった。すなわち、サウジ、インド、UAEがその対象である
●特にサウジの貢献が大きい。米国の購入額が5年連続で縮小する中、サウジによる84機の新F-15SA購入契約や70機の現有F-15能力向上契約が、2011年度の総額を大きく押し上げている。その総額は関連兵器や兵站支援を含めて$29 billionに上っているからだ
●軍需産業は、国防省による武器輸出規制や手続き簡素化の流れを大歓迎しており、取引額の伸びはその成果とみられている
30日付AF-Magazineレポートは・・・
●2011年米国武器取引の記録的な額により、米国は世界市場を支配した。世界の取引の77.7%は米国の取引である。
●世界の武器取引額総計は、2010年度から11年にかけ、$44.5 billionから$85.3 billionへ上昇した
●しかし本CRSレポートの執筆者は、この増加の大部分は、84機の新F-15SA契約を含む$33.7 billionのサウジ取引によるもので、国際市場が全体に拡大している訳ではない。
●弱含みの世界経済の影響を受け、国防支出は一般に制限傾向にある
30日付人民網日本語版(東方ネット掲載)
●米国の武器輸出は2011年に前年の3倍に増加し、過去最高の総額663億ドルに達した。第2位のロシアの武器輸出額はわずか48億ドルで、世界最大の武器輸出国としての米国の地位は確たるものだ。
●過去1年間世界経済は難航したが、その反対に米国の武器貿易は増加しており、その背後の原因について考えさせられる。
●2011年の米国の最大の武器輸出先はサウジ、UAE、オマーンといった湾岸諸国。アナリストは湾岸諸国の武器購入熱について、イラン核問題のエスカレートによって中東に米国製武器への固定需要が生じたと指摘する。
●過去1年余りの間に湾岸諸国の武器輸入は爆発的に増加しており、制裁を強化し、武力行使の声を強め、続けて武器を配備するという、イランをねらった米国の一連の措置との関わりは否定できない。
●米国の行動が域内諸国に戦争を連想させ、不必要な安全保障上の需要をかき立てた。これによって米国製兵器がよく売れたのも自然な流れだ。
●米国は「大中東計画」を定め、自国の進んだ軍需産業のために市場を切り開くことを忘れないし、国内の低迷する雇用を刺激することもできる。一挙多得と言えよう。
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人民網の主張する「陰謀説」には付いていけませんが、結果的にオイルマネーを還元させて米軍需産業が潤ったことは紛れもない事実でしょう。
ペルシャ湾で紛争が起きた場合の影響は計り知れなく、また国としての陰謀が可能なほど米国政府と産業界にまとまりがあるとは思えません。
いずれにしても、中東のオイルマネーがマネーゲームや穀物投機に走らず適当に世界経済を刺激し、中国の世界経済への影響力や支配率を少しでも下げてくれるのであれば、道楽でも許してあげましょう。
また、香川や長友のリーグへの投資や、本田をロシアから解放してくれるチームへの投資なども歓迎です。
「武器輸出改革が着々進行」→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29
「武器輸出・共同開発の方針転換」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22
「武器輸出管理の仕組改善とQDR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09
「インドでは商売人:副長官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-24
「パネッタ長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-06