AEIが対中国軍事戦略を

RIMPAC2010.jpg6月5日付で共和党系有力シンクタンクAEIが、米国の西太平洋軍事戦略に関する提言レポートを公表しています。中身はシンクタンクCSBAが2010年5月に発表したAir-Sea Battleレポート似ている印象ですが、台湾事案も含め議論しているようです。
レポート名は「Asia in the balance: Transforming US military strategy in Asia」です
前傾戦略(forward-leaning)という言葉で、中国軍事力の射程距離や勢力範囲が拡大する中で、これまでとは異なる西太平洋態勢への転換やより特化した戦力配置等を求めています。
斜に構えて見れば、中国の長射程脅威発展に応じて現状の前方展開を見直し、地域の同盟国等にもっと頑張ってもらい、米のみが可能な高度な分野に集中して関与する様な方針に見えます。
本日はまず「Executive Summary」をご紹介
従来の西太平洋における米軍態勢
第2次大戦後、平時有事を問わず米国は、、同盟国基地に展開の戦力や本国から展開する戦力、核戦力、空母機動部隊によってその国益を防御してきた。
しかし中国の組織的なアプローチにより、米国のこのような抑止と戦闘遂行力と同盟国への信頼感確保は浸食されつつある
具体的影響の懸念
andersenGM.jpg●中国軍事力の近代化により具体的には、地域の米同盟国が米国による核抑止から分離する恐れがある(自力での核兵器等獲得に動く恐れ)
●また、中国が同地域の米領土や同盟国に所在の固定基地を破壊する恐れがある。更に、これらにより米国のパワープロジェクション能力の信頼性を犯す
●中国が海、宇宙、サイバー空間でも軍事能力を強化してことに十分対処できていない
●これらを合わせ、中国が米同盟国等を脅迫し、米戦力を脅威下に置き、アジア地域の海洋を支配することを可能にする
本状況への対応
●現状への対処案には、まず情勢が悪化し続けても現状の「幅広な」アプローチを維持する案、次に新孤立主義者に好まれる米国関与と米国の役割縮小を選択する案がある
第3の案は「前傾戦略」で、米軍の脆弱性を減らしつつ、米国の関与を維持するバランスを追求するアプローチである。この戦略では、前方展開基地と遠方からの攻撃能力をうまく組み合わせる。
●この案では、作戦面のリスクと国益の犠牲を防ぐため、現在より専門化・特化した戦力体制を想定する
前傾戦略では
globalhawk.jpg●2本の柱、平素から長期に渡る中国との競争における努力、及び有事に中国が短期に戦闘で勝利を収められない点を中国に認識させる努力の2つが中心となる
●2つの柱のどちらにも重要なのが、同盟国等による貢献の拡大である。軍事的バランスの変化を懸念するのは米国だけではないはず
●米国はこれら他国と緊密に協力し、統合された効果的対処が出来るように準備すべきである。
●財政が厳しい中でも、特に以下の4つは当地域の軍事バランスの変化を踏まえるとhigh leverageで大切。
●4つは、同盟国全体での西太平洋ISR能力、同盟国全体での水中戦能力(対潜水艦作戦能力)、米軍が利用できる基地の範囲拡大、核抑止能力
岡崎氏は「WEDGE」でサマリー以外にも触れ・・
(6月28日付)
●アジアにおける歴史的利益を守りたいなら、米国はより一層努力し、軍事的資源を動員しなければならない。米軍の構造・配置の調整に失敗すれば、米国の関与意欲と実力は大きく乖離する
●政府はアジア関与のコストのみならず、その利益も説明し、米国のプレゼンス拡大に必要な予算を求めていくという政治意思を持つことが重要だ
この政治意思は、同盟国やパートナー国との協働による望ましい米軍の配置を実現するためにも必要
UUV.jpg●今後必要となるのは、紛争時に、台湾周辺の封鎖を突破する力、台湾海峡や東シナ海における機雷除去能力、広域的に対潜作戦や機雷敷設を行う力中国側の指揮統制・通信情報能力を無力化し、レーダーや偵察衛星を破壊する能力など
しかし現状では、掃海艇はほとんどなく、空中からの対潜作戦は日本に大きく依存している。さらに、ステルス・非ステルス両方の飛行機も、数が足りない上に、抗堪性を向上させる必要
●同盟国への要望(特に日本へは)
—飛行場など重要施設の抗堪性の向上
—有事に共同で使える新たな飛行場や港湾施設の確保
—海上自衛隊の対潜能力の維持するための、潜水艦勢力増強や対潜航空機の更新
—南西諸島方面への対艦巡航ミサイルの配備
豪州、インドとの協力の強化や韓国との軍同士の関係の改善を求める必要
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読めば読むほど、CSBAのレポートと基本的考え方がそっくりですが、CSBAより当然の事ながら現状を踏まえたアプローチを行っています。2年遅れて発表しているのですから当然ですが・・
日本への要求事項など、既に実政策として進行中のモノが並んでいるような・・・
しかしこれで、民主党と共和党の両方のサイドから同様の中国軍事力対処の方向性が示されたと見ることも出来ます。
米国の考え方は、極めて軍事的合理性からして、また米国の立場に立てば自然な選択です。
日本も特異な歴史的経緯や偏狭な憲法議論の呪縛から逃れ、日本の戦略的環境を冷徹に見据えた軍事的対処を「自然体で」考えないと・・。
CSBAレポートの情勢認識と対応
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2
Air-Sea Battle関連記事
「海空軍トップのAS-Battle論文」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「概要海空軍トップのASB論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25

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