「いつも米国防省や米軍の女性ばかりを取り上げ、なぜ日本女性を取り上げないのか」とのご指摘を頂戴し、併せて政府(海外)広報誌「Highlighting JAPAN」に掲載された栗田千尋2等陸佐をご推薦いただきました。
とても爽やかな印象が漂い、信念は堅く強くも、気取りや肩の張ったところのない自然体な方とお見受けしましたのでご紹介します。
広報誌の「連載|やまとなでしこ」より抜粋
●防衛省統合幕僚監部の栗田千寿2等陸佐は、昨年、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)に軍事連絡要員として派遣された。日本人女性自衛官が国連PKOに個人派遣されたのはこれが初めてであった。栗田2等陸佐にジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。
●Q:何故、自衛官に?
●栗田:高校生の時に自衛官という職業を知りました。調べると、階級社会である自衛隊だからこそ、自分の努力次第で自己実現ができると思ったのです。様々なことにチャレンジしながら自分の将来像を見つけていこうという気持ちでいましたが、今でも、女性自衛官であることの意味を自問自答する日々が続いています。
●栗田:ただ何をするにしても、自衛隊の一員として国のために働くのは、自分にとって極めて自然な選択だったと思っています。
●Q:自衛隊で女性の割合は約5%ですが、自衛隊内で女性であることは意識されますか?
●栗田:約9年は対空ミサイル部隊で、男女の区別はなく、演習場で顔を緑に塗って、背中にカモフラージュの草を付けて、銃を持って訓練をしたりすることも男性と一緒でした。
部隊の中隊長として60数名の隊員を、2年間率いたこともありました。女性が指揮する中隊が弱く見えないように、隊員にはきびきびと指示するように心掛けていました。隊員も私を支えようと一致団結していたように思います。
●栗田:女性自衛官の価値の一つは、女性のもつ「母性」にあると思っています。部下の隊員は、日常の些細なことも気軽に話してくれ、そんな雰囲気が部隊の活気につながりました。自衛隊は男性社会だからこそ、女性らしさを失ってはいけないと思っています。
●Q:東ティモールでの半年間は、どのような任務を?
●栗田:不安もありましたが、海外での任務は将来に役立つチャンスだと感じました。東ティモールでは担当地域の町や村を訪れ、情報収集することが任務でした。警察、病院、学校の関係者や村長にインタビューを行い、政党や若者グループの動向など治安に関わる情報から、食糧、衛生、教育事情に至るまであらゆるレポート活動を行っていました。
●栗田:迷彩服を着ていましたが、私が女性ということもあるのか、現地の方々は、非常に安心して話してくれました。あと、「クリタ」という私の名前が、現地の言葉で「タコ」という意味だったのです。だから、タコのまねをして体をくねらせておどけてみせると、子どもも大人もみんな大喜びでしたね(笑)。
●Q:今のお仕事は?
●栗田:ASEAN、ニュージーランド、オーストラリアといった国々との防衛交流を担当しています。今後も日本の自衛隊の活動を海外に紹介したり、他の国の方々と一緒に活動をしたり、国際的な分野に携わっていきたいと思っています。いずれにせよ、55歳の定年まで勤め上げたいですね。
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「千寿」というお名前は、ジブリ映画「千と千寿の神隠し」の千尋と同じですが、そんなまっすぐな感じの方ですね。「価値の一つは女性のもつ母性にある」はその通りで、今後もギスギスしないでいただきたいモノです。「55歳の定年まで」とはご謙遜を。まだまだ上の階級でご活躍でしょう。
陸自にはこのような貴重な人材があり、またその育成も立派です。ですから、定員削減や海空への転換に当たっても、その当たりを良く引き継ぐ必要があるでしょう。
栗田さんは、先日ご紹介した防衛省の冊子「Japan Defense Focus」にも登場され、表紙写真を飾る人気者のようです。ちなみに・・・防衛省冊子の写真には「左手に指輪」が確認できます。
「空自女性幹部の米核兵器論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「防衛省活動を英語で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-10
「ある特殊部隊女性の人生」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27