この人事は驚きです! 10日パネッタ国防長官は、オバマ大統領が次期空軍参謀総長に現欧州空軍司令官であるMark A. Welsh III大将を推薦したと発表しました。
大将ですからF-16やA-10操縦者としてそれなりの経歴はありますが、本当にそれなりです。
空軍司令部の勤務経験はなく、大佐昇任後の経歴は、J-3防衛宇宙作戦係長、在韓国の第8航空団司令官、空軍士官学校の教官や校長、欧州空軍の計画部長、空軍省の将来調達部署の課長、教育訓練コマンドの副司令官、戦略コマンドのISR副司令官、CIAで軍事補佐官(08年8月–10年12月)、そして現在は欧州空軍司令官です。
Mark A. Welsh III大将のご経歴→こちら
パネッタ長官は会見で・・
●砂漠の嵐作戦で複数の戦闘任務を遂行したパイロットで、空軍士官学校校長としてのリーダーシップ等から次期空軍参謀総長として必要な資質を備えている。
●私がCIA長官時代に緊密に仕事を行い、彼の助言と知性を深く認識するようになった。
(本当にウェルシュ大将への言及が少ないです。突っ込まれたくないのかも)
現職でのウェルシュ大将は・・
●偶然ですが昨年9月、米空軍リストラの主対象である欧州空軍関連の話題を取り上げた際、空軍協会機関誌の記事から、自身のポストが将来格下げになる予定のウェルシュ大将への悲哀に満ちたインタビューをご紹介していました。
●上記記事では・・・記者Q「貴方は欧州への関心を失っていないか?」 同大将A「それは質問に値する合理的な問いだ」
●また哀愁漂う欧州米空軍について同大将は
—米軍経費削減と体制見直しの一環で欧州米空軍司令官の4つ星から3つ星への格下げ
—欧州各国の経済情勢から来る平均2割の国防費削減
—ほんの数年前に出来たばかりのアフリカ軍隷下の米第17空軍が閉鎖され、欧州担当の第3空軍と統合
—英独伊の米基地にA-10やF-16が所在も、F-22はハワイやグアムなど西太平洋地域を中心に展開し、欧州にはほとんど飛来無し。F-35の欧州への配備予定は現在無い。・・・・・等々と寂しげに語っていたところです。
「欧州米空軍の苦悩と挑戦1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-24
「欧州米空軍の苦悩と挑戦2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-24-1
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ウェルシュ大将については、雑誌記事と米空軍作成の経歴表からの知識しかありませんが、戦闘機パイロットの本流経歴ではありませんし、学校や教育コマンドの配置からしても空軍幹部内の評価がそれほど高かったとは思えません。
あえて言えば、ISRや宇宙をかじり、国防省が重視のアジア太平洋を14ヶ月の韓国勤務で経験、統合で調達業務を経験、欧州で対リビア作戦を通じ多国間の調整に奔走した実績等々から・・と言うことでしょうが、薄いです。
米空軍の本流の幹部達が「毒されている」と判断され、外された・・と見ることも出来るでしょうが・。
やはり何と言っても、パネッタCIA長官時代に空軍中将として身近に仕えた経歴がものを言っているような気がします。
先日、後任者に関しシュワルツ現参謀総長は「個人的な繋がりだけで選べるようなポストの人事ではない」との趣旨の発言をしていましたが、結果的には・・ですね。
今思い返せば現参謀総長が「次期参謀総長には考える時間が必要だ・・」とも述べ、早期の推薦と議会審議を希望していましたが、ペンタゴンの空軍司令部勤務が無く、ペンタゴンから7年間離れているウェルシュ大将を心配してのことだったかも・・。
「空軍参謀総長は8月交替」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09-1