16日、パネッタ国防長官とデンプシー統合参謀本部議長が揃って記者会見を行い、予算の強制削減(sequestration)回避に向けた努力を再び議会に要望しています
特段新たな事実があるわけではありませんが、定点観測も重要ですのでご紹介します。
パネッタ長官は・・・
●予算強制削減の陰がそこに迫りつつある。国防省は政府の予算管理室から、強制削減に関する準備について何ら業務指針を示されていないが、この脅威は既に国防省や関連軍事産業に影響を与え始めている
●全ては議会に掛かっているのだ。数週間の内に、議会は国防予算関連法の検討に入るが、議会が慎重に新たな国防戦略とそれに基づく予算案を検討してくれるよう希望する
●国家予算には限りがあり、予算はゼロサムゲームである。予算を変更すればどこかが必ず影響を受ける。当然リスクをはらんでいる。適切に対応しないと、空虚でバランスの欠けた弱体な軍を生み出すことになる。
●議会が理性的であることを願う。私が議論した全ての議員は、国防予算の強制削減が大被害をもたらすと考えている。「素晴らしい」と考えている議員はおらず、皆が悪い方向に向かっていると感じている
●私は、議員達が究極的には勇気とリーダーシップを発揮し、強制削減を食い止め、目の前にある他の課題に対応するため、直ちに取り組んでくれると希望している。
●率直に言って、この状態が続くほど、諸計画や予算検討プロセスが影響を受ける。我々は危険で不確定な世界に直面しており、議会が辺境主義や党利優先に陥っているのを受け入れる余裕はない。
デンプシー議長は・・・
●我々は昨年、国が直面している財政状況を直視して新国防戦略を策定し、新戦略に基づき2013年度予算案を作成した。新戦略発表から2月の予算案提出まで、我々は全精力を傾けて変化に対応する案をくみ上げた。
●しかし、もし少しでも強制削減が実行される可能性があるなら、この夏の中旬から下旬にかけて、強制削減が実施された場合に備えた検討を開始しなければならない
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「夏の中旬から下旬にかけて・・」とは夏休み終了後直ちに、と言ったイメージでしょうか。
強制削減の影響を、1月にMichael O’Hanlonは・・
●今後10年で、国防費を8-10%(約$500億ドル)節約するのは、困難だが不可能ではない。陸軍は一つの戦争だけに備え、海軍は285隻から250隻に削減し、核戦力維持の経費を節約すればどうにかなる。何とか軍人の給料カットを回避し、東アジアとペルシャ湾間の両方に備えることが可能
●しかし予算の強制削減が実施され15-20%のカット(約$ 1兆ドル)になると、単に軍事費を削減するだけでなく軍人の給料も下げねばならなくなる。また、ペルシャ湾と東アジア太平洋の二者択一になる。
●つまり、地上軍は不足が明確だった1990年代レベルにまで下がり、海軍は西太平洋とペルシャ湾の二者択一を迫られる。そして、軍需産業は衰退し、いざという場合に対応不能となる。
「兵士はリスクを負い議会は逃げる」→holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-02
「リーダーは困難な決断を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「政治家よ目をそらすな議論を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「強制削減検討は夏から」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-01
「2013年度予算案の概要会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-27
「トランスクリプト予算案会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-01-1
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そう言えば・・・この会見で記者から「長官は就任以来約9ヶ月間で、軍用機で20数回自宅のあるカリフォルニア州を往復しているが、無駄遣いでは?」との質問がありました。
長官は、常に通信を維持しなければならないためだが、この経費節減の折り今後は精査するとの回答。
デンプシー議長は、自宅への帰宅だけが目的ではなく、西海岸の部隊視察や各種行事枝の参加も含まれているとフォローしていました。
ちょっと多すぎる気がしますね・・・ワシントンが嫌になったか・・・。