米会計検査院のF-35計画分析

国防次官:「まだまだ道が長いことを認識する必要有り」
F-35計画責任者:「初期運用態勢の時期は未定」
F-35A NgtFt.jpg20日、下院軍事委員会でF-35関連の集中審議が行われた模様で、米会計検査院(GAO)と国防省側の関係者が発言を行っています。
両者とも、過去1年間のテストや開発が精力的に行われたことに触れていますが、まだ必要な試験の8割が未実施である等、まだまだ予断を許さない状況にあることが発言や検査院レポートから浮き彫りになっています。
もう一つ・・・今回の軍事委員会でのやり取りを、米国防省webサイトは国防省側出席者の「前向きな」発言のみで伝え、悲観的なトーンの会計検査院レポートや発言に一切触れていません
この辺りが「Too big to fail」な本開発計画の「開き直り感」を示しています。本日は、より客観的と考えられる検査院レポートを中心にご紹介します
会計検査院(GAO)レポートは・・
GAO.jpg●飛行試験の進行が順調になりつつあるが、まだ全体の2割しか終わっていない。まだまだ難しい段階が控えている
●試験で明らかになった修正箇所も、仮の未検証の対策が複数有る状況。2400万行に及ぶソフトの管理・開発問題も引き続き残っており、試験や訓練の進行を妨げている
●F-35の戦闘能力の中核となるミッションシステムの開発が引き続き遅れており、riskyな状態にある。現時点で、わずか4%しか同システムの能力が検証されていない。
●このような遅れから、全システムを総合した試験は早くとも2015年以降にしかできない状況にある
●個々に見ると、HMD(ヘルメットMDシステム)とシステム全体の不適合が顕著。また維持経費を節約するはずの自動兵站情報システムの開発も不十分である
F-35A-baydoors.jpg●現時点でも、初期生産63機に関し1年以上の生産遅延が生じ、1機当たり10億円の価格高騰が見積もられている。その他に、試験で明らかになった不具合の修正費用が発生しており、現時点では生産過程で吸収するとしているが、大量に試験が残っていることから、コストについては未確定な部分が大きい
●従って、効率的な生産量のレートがどうなるかも不確定である
●計画では、2019年までに修正箇所が出尽くすだろうと見込んでいるが、試験と生産が同時並行で進む状況の中で、米国は数百機への投資を継続しなければならない状況にある
●大きな5つの課題の内、2つは修正が成されたが、残りの3つについては仮の対処になっている。この全てに恒久的な対応が成されるまで、問題が解決されたとは言えない
20日付「DODBuzz」は・・
●このような不安定な装備に、米国は2035年まで、継続して年間約1兆円を投入しなければならない。
特に米空軍の場合、F-35の購入と、最優先装備である次期空中給油機(KC-46A)と次期爆撃機を同時並行で進めなければならない状況になる
F35venlet.jpgF-35計画責任者のバレット海軍中将が「初期運用態勢確立の時期は未確定」と委員会で証言したが、検査院のレポートはその理由を「開発計画が推測が可能なレベルの信頼性を見せていない」と断言している
●そして「各軍種が初期運用態勢時期を口に出来るのは、計画の行く末に関する更なる情報が提供されてからである」と分析している
垂直離着陸型の「保護観察」が解除されたが、それだけのことで、全ての修正は仮の修正に過ぎない
空母離発着型も、アレスティングフック問題と再設計のため艦上運用のめどが立っていないし、関連するソフトも間に合っていない。
●軍事委員会の議員は、更なる一連の問題にも投げ出しそうな態度は見せなかった。大きすぎて重要すぎる計画だからどうしようもないかのように
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特に申し添えることもありませんが・・・・
F-35計画責任者のバレット海軍中将は、F-35を「critical presence to many nations」と呼んで、開発パートナー国や購入予定国への責任に言及していますが、この状態では「F-35とともに(安全保障維持責務から)脱落」になりかねないと改めて感じます。
「カナダもF-35に及び腰」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-14
「敵に財政負担を強いる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-03
「F-35やっとミサイル試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-22
「F-35価格は外国の購入量次第」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-15-1
「F-35の生産開始は早すぎた」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08
「F-35運用体制は2018年に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-05
「豪が米のF-35計画を精査中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-29

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